Monochro Campus | ナノ


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まぁそれはいいと不知火は一旦話を終わらせた。どうやら不知火は私に用があって来たらしい。何だと思うと腕を掴まれた。反射的に腕を引くが、強い力が邪魔する。


「名前、ここの制服の焦げ跡、翼を庇った時のだろ」

「誰だ、それ。知らないし」


脳裏にさっきの背の高い男子生徒が浮かんだ。多分そいつで間違いは無いが、知らないのは本当なのでそう答えた。
不知火は私の答えが不満なようだが、何かを察したように腕を離した。怪我は無いかと聞かれる。実際に腕を見ていないから分からないが、あると言ったら面倒なことになるのが目に見えている。私は首を振った。

爆発が起きたのはさっき。やっぱりあの爆発音で不知火にバレたのか。あとはあの男子生徒が何か余計なことを話したか。
不知火が来て何が面倒だと言えば、あれやこれやと聞き出されること。彼の尋問は宙ぶらりんの私には辛いところがある。それを知らないから更に強引に聞き出されるのが面倒。


「視えたのか?未来が」

「さぁ…よく分からない」


不知火は考え込んだ。星詠み科に入った時点でみんな持っている力だ。私は例外。 そもそも非現実な事を信じていない。
正直、認めたくないんだ、私の能力を。

自分でもよく分からなかった。宙ぶらりんで自分を繋ぐ何かを見つけたくて、見つけたそれは信じることのできないもので。
そもそも私は何を望んでいたのか。それすらよく分からない。

遠くを眺めていると、頭がずしりと重くなった。


「良かったんじゃないか?四季からまだ星詠みができないって聞いてたから心配してたんだ。」


頭を撫で回すと不知火は笑った。嬉しい事がどうか知らないが、私は不知火みたいに喜べない。手をはねのけて寮へ帰ることにした。


ポーチからチョコレートを取り出し口に放り込むと、ベッドに寝転がる。口の中で溶けていくチョコレートはやがて消えた。
私はため息を吐いた。私の存在理由を考える最近。あっても真面目に生活するのかと言われればそうではない。でも無いと本当に何もかもがどうでもいい。
不知火と神楽坂曰く、私はどうやら本当に星詠みの力があるらしい。だからなに?そう呟き、寝返りを打つ。これが私の存在理由かもしれない。なのにどうでもいいと思ってしまい、興味が湧かなかった。力がある意味が無い。

星詠みってどうでもいい未来は見せるのに、私がどうなるかは教えてくれないんだ。ここに生きる理由を教えてくれないんだ。


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