Monochro Campus | ナノ


30


何となく訪れた屋上庭園で出会った黄色い蛇柄毛布。そしてそれを座布団代わりに寝る少年。


『…あんたは、必要な力を持っている』

『今は潜在能力として隠れているけど、もうすぐ大きな力として現れる。あんたがこの学園に呼ばれた理由が分かる。』


こいつ、初めてここに来た時に意味が分からない事を言っていた奴だ。蛇柄毛布はこいつのだったのか。思わず足を止めて見下ろしていると、彼の目が開かれた。


「………」

「…何か用」


少年は怠そうに立ち上がると欠伸をした。何か用と言われても、何から聞くべきなのか。困っていると向こうから『必要な力は見付かった』と聞いてきた。必要な力の意味が分からない。首を振るとまた座り込み、眠そうにしていた。


「もう少し…、もう少ししたら分かる。」

「何がだよ」

「俺は神楽坂四季。アンタは」


私の質問は無視か。マイペースにも程がある。名前を言うと眠そうによろしくと言われた。何をよろしくするんだ、変わった奴。またうとうとしだした相手を見ながらため息を吐いた。

…それにしても、こいつ見てると眠くなる。欠伸が思わず漏れた。いい風が吹いている。
私も少し寝るか。
日陰になる木の根元に腰掛けると、自然と瞼が落ちてくる。そこから意識が落ちるまでは数秒とかからなかった。


起きた時には夕方だった。神楽坂はいつの間にか起きたらしく、見当たらない。
彼はマイペースだけど気遣いはできるみたいだ。私に掛けられていた黄色い蛇柄の毛布を見てそう思った。しかしこれをどう返せと言うのだ。
そう思った時、脳裏に風景が浮かんだ。ほんの一瞬、通り過ぎるように。何の風景かは分からない。何故風景が思い浮かんだかも。


『…あんたは、必要な力を持っている』


神楽坂の言葉が脳内で繰り返される。どういう、ことだ。何か関係あるのかどうかも分からない。ただ分かるのは、どうでもいいと思っていたことに振り回されているという事。そんな自分に舌打ちしたい。
立ち上がり、スカートを払うとカラスが鳴いた。それが馬鹿にされた気分だった。


寮に帰ると既に夕飯時だった。部屋のドアノブに掛けられたレジ袋を見ると夕飯を食べる気が無かったことがバレていた。誰が掛けたかなんて予測済み。
一応その袋を受け取り部屋に入った時に携帯が鳴りだした。着信とかではない。電池切れを知らせる音。そりゃそうだな、こっちに来てから充電のしようがないから。寧ろ今までよく持ったと思う。
携帯の電源をオフにして思った。

…こっちで使える携帯買わないとな


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