02 暖かい……… ふわりとした不思議な感覚に包まれた。 目を開けたら白髪というか、銀髪の髪の男の人がいた。すごく驚いたような顔をしている。というか、顔が近い。知らない人なのになんでこんなに近いんだ。 しかしなにか引っ掛かった。知らない?いや、違う。この人どこかで見たことがある。 「ってぇ………お前、怪我無いか?」 目の前の銀髪が言った。なにが怪我だ。そこで分かったのは今私はこの銀髪に抱き締められているというか、支えられて倒れ込んでいるという事。成る程、だからこんなに至近距離なのか。 起き上がり、その人の腕から抜けて辺りを見回した。見覚えの無い景色。私はこんなとこに来た覚えは無い。確か卒業式の時に担任に渡すプレゼントを友達と買いに行っていたはず。こんな緑の多いとこに来た覚えは無い。 呆然と辺りを見回していたら銀髪が大丈夫かと聞いてきた。大丈夫なわけない。一体なんだってんだ。 「…ここは、どこですか?」 「星月学園だが…お前知らずに来たのか?」 知らずもなにも、来るつもりは無かったんだから分からないのは当たり前だ。でも星月学園…。また脳内で引っ掛かった。聞いたことある?自分の中の曖昧過ぎる記憶が掘り起こせない。 銀髪は不審者を見るような目で見てくる。実際そういう扱いだろう。さっさとこんなとこ出よう。そう思い、立ち上がった。 軸とする右足に力を入れた瞬間、激痛が走る。どうやら足を捻ったらしい。目を開けたら男の人に支えられているわ、足を捻るわ。無意識の間になにをしたんだ。 相手が私の異常に気付いたらしい。立ち上がり支えようと手を伸ばした。 「別に助けいらないんだけど」 「お前、足捻ってんだろ?」 「別に何とも無いし」 誰が好きでこんな人に助けられなきゃならないんだ。ムッとして手を払い除けたらため息を吐かれた。なんなんだ、不審者なんだからほっとけばいいでしょうが ここは、なんか私にとって居心地が悪いと思った。さっさと家に帰りたい。銀髪から離れようと足を進めると激痛が走る。無意識に脂汗が出る。でも左足は動くんだ。大丈夫。 「おい、捻った足を無理に動かすんじゃねぇ」 今度は強い力で肩を掴まれ、引き止められた。本当になんなんだこの人。払い除ける事ができないから斜め後ろのその銀髪を睨んだ。 「俺が嫌なのは分かったが、そんな痛そうにしてる奴放っておけるか。ほら、掴まれ」 私の睨みに動じない男の人は私を抱えるように持ち上げると近くのベンチに座らせた。決して細身ではないが、その身体のどこにこんな抱え方をする力があるんだ。 私をベンチに下ろすと相手はしゃがむと一言、下げるぞというと私の私服の靴下を下げようとしてきた。いきなり脱がされるというのは抵抗があるもので、思わず足を蹴り上げたが、上手いこと靴下は足から抜けていた。 酷いな、と呟かれた自分の足を見ると足首が真っ青に腫れていた。ただでさえ太い足なのにこれは無い。自分でも驚いた。 「これは保健室に連れてくべきだな…。あの人なら他校関係なく診てくれるだろうし。おい、ちょっと待ってろよ。応急処置してここの保健室に連れていってやる。」 「別にいらない」 「それでもこれは酷いだろ。ぜってー動くなよ」 そう言って男の人はどこかに歩いて行った。 ← |