Monochro Campus | ナノ


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「何で夢を見たくないんだ」


投げ掛けられた質問は無言で返した。この人に話す理由が無い。だから説明をする必要は無いし、そもそもするのがめんどくさい。


「まぁ無理に話せとは言わない。そもそも俺も眠いし聞くのが面倒だ」


流石大人と言うべきか、人との距離を保つのが上手い。ただどこか根本的なところが間違っている気がする。だいたい教師が完全に昼寝の体制に入るってどうなんだ。白衣を脱ぎ捨て、隣のベッドに潜り込む星月先生を見ながら思った。完全に昼寝の世界へ入ったらしい。寝息を立てはじめた教師に呆れながらベッドを仕切るカーテンを閉じた。
こうして空間が狭くなると何故か人は考え事がしやすくなるものだ。私はベッドに寝転びながら目を閉じた。今脳内を占めるのは自分が見た夢の事ばかりで、その夢が脳裏を駆け巡っていた。

最初にこの夢を見たのは不知火に生徒会室へ連れていかれてそこで昼寝した時だった。内容は私の友達が私と待ち合わせていたが、一向に現れない私に疑問を持ったのか私に連絡していた。しかし私の携帯は繋がらず、その日は会えなかった。その出来事を私はどこからか眺めている状態。私がここに飛ばされた直後を見ているようだった。
次に夢を見たのが同じ日の夜、寮の部屋で寝た時。卒業式で私の名前が呼ばれなかった瞬間だった。私の1つ後ろの出席番号だった人が呼ばれた瞬間、自分でも不安を感じた。自分のクラスを見たら異変に気付いた人と、気付いてない人がいる様子だった。分類すれば私と親しかった人かそうでないか。親しかった人が私を覚えていただけであの時は少しほっとしていた。
3度目は次の日、授業中にうつらうつらしていた時。卒業式後の教室だと思う。友達が私が卒業式にいない理由を周りに聞いていた。その時の返答が『名前?誰その子』だった。そう答えた子は時々話す子で私の事を知っているはず。友達が焦ったように別クラスにいる私の彼氏の所へ向かい、聞いていた。私が今何処にいるか知らないかと。夢の中で私も願った、彼が答えてくれる事を。しかし、その期待は見事裏切られ、『誰だ、そいつ』の一言で済まされてしまった。
そこで私は目が覚めた。それ以降、私は寝ていない。

寝る度に毎回見る夢は夢という割にやけにリアルで、私がいた世界と繋がっているようだった。そして時間が経つにつれ、私の存在が消えていくのを感じた。





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