Monochro Campus | ナノ


25


とある夜中、携帯を開くと2時半だった。できるなら寝ていたい時間帯。しかし私は先生に渡された課題を黙々と解いていた。


「ふぁ…」

「でけー欠伸」



次の日は勿論寝不足。私が欠伸をすると、前の人の椅子に座り私の机で堂々と肘を付いてきていた不知火が笑った。人間の生理現象だ、仕方ない。次の授業の準備をしながら返すとちゃんと寝たか聞かれた。曖昧に返事はしておいたが、実際は寝ていない。
星詠みの力があるというだけでここに入れられた私は2年分の基礎ができていない。そこで私は担任の先生に課題を出された。それも大量に。面倒な事をと思ったがやるしかない。さっさと終わらせるべく昨日寝る時間も惜しんで進めていた。

それにしても、何故不知火は私の前に居るんだ。聞いたら細かい事は気にするなと言われたが、細かくはない。朝登校した時からこの調子で正直ウザイ。本人の席は割と離れた真ん中辺りだったはず。一体なんなんだ。
授業が始まってからも不知火の様子は変わらなかった。自分の席に戻っても時々後ろを向いて私を見てくる。初めは気のせいで流していたが、段々イライラしてきた。



「名前それ昼飯か?ゼリー飲料だけだと腹減るぞ」

「お前の視線で食べる気が失せたんだよ」


昼休みになると不知火は私の席までわざわざ訪ねてきた。本人は購買のパンをいくつか抱え、朝と同じ様に私の前の人の椅子に座った。次は体育だからと不知火は私にパンを寄越す。しかし食欲が湧かない。


「…いつから寝てない」

「…………」


バレてた。さっきまで何も無いような態度だったのに、急にすっと目を細めた不知火が珍しく真剣な顔して聞くもんだから誤魔化す事が出来なかった。無言で返すと不知火がため息を吐く。
ゼリー飲料が音を立てはじめたころ、次の体育の着替えが教室でぼちぼちと始まっていたので私は席を立ち上がり、体操服の袋に手をかけた。男子が本格的に着替え始める前に教室を出ようとした時に腕を引かれた。見なくても分かる、不知火の手だ。
一体何だ、自分もさっさと着替えろ。そう思ったが、思ったよりもキツい表情をしていたそう言葉に出来なかった。


「行くな」

「…は?」

「行くなよ、お前このままだと倒れる。体育に出て無理するな」

「今日は短距離走だろ。そんな大袈裟な」


手を振り払おうと引いたのに、離してもらえない。本人は譲らないらしく保健室に行くか聞いてくる。しかし、今行くわけにはいかない。
体調は悪くない。そう不知火に強く告げると掴まれていた手の力が緩んだ。

今日の屋外は思いの外暑い。不知火がまた横に来て日陰にいろだのなんだの言い出した。
今日の不自然な行動は私の寝不足に気付いてか。不知火を侮ってたなとさり気なく避けながら思った。体育さえ始まってしまえば取り敢えず離れるだろう。そう思って日差しに当たって痛みだした頭を押さえた。何で今痛みだすのかな、タイミングが悪い。
体育の先生の笛の音で集合の合図がかかる。その方向に足を向けた時だった。


「名前!!」


視界が歪み、足がふらつく。やってしまった、と遠退く意識の中思った。




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