Monochro Campus | ナノ


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「それにしても噂の編入生がまさか名字だとは思わなかったぜ。」


七海が私を眺めながらしみじみした様子で言った。私も自分が本当に入るはめになるとは思わなかった。大きなスカーフがまだ違和感で、ピンを外して取ると制服のボタンを緩めた。窮屈で、あまり好めない。
スカーフをぶらぶらさせていると、七海がそれを思い切り見てきた。それも驚いたような表情。


「…名字、もしかしてそのスカーフ青っつう事は、3年なのか」

「まぁ、取り敢えずは」

「え、あ…わりぃ、じゃなくてスミマセン!まさか先輩とは思わなくて」


まさかとはどういう意味だ。というか私は君より2つくらい年上なんだが。
なんて説明するのもめんどくさく、適当に受け流しておいた。さすがに年齢の1つ、2つの違いはすぐに分かるものじゃない。こんなことで怒るだけ無駄だと思う。頭を上げた七海は名字先輩と何故か改まって呼んだ。慣れない呼び方がむず痒くなる。

七海はさっきの2人と幼なじみが食堂で待っているらしく、教室を出ると別れた。私は食堂に戻る気は完全に失せていた。




「お前、急にどこ行くんだよ」


自分の教室への帰り道が分からずふらついていると、後ろから不知火が走って来た。昼飯はどうすんだと聞かれたけど、今は食欲より睡眠欲の方が上回る。いらないと返すと俺の奢りがどうのこうの文句をぶつくさ言っていた。そんなの知らん。
次の授業も専門科目らしく、私は欠伸をした。



そしてどこをどうすればこうなるんだ。


「今日は俺しか来ないんだよ。1人でやるのは寂しいからな」

「勝手に仕事してろ」

「あー待て待て待て!帰るなって、ちゃんと用があってここまで連れて来たんだよ!!」



1日の怠い授業を終え、さっさと帰って寮で寝ようとしたら不知火に捕まった。逃げようとしたが痛む足と身長の差であっという間に捕まり、変な部屋に連れていかれた。
ソファーがあるこの部屋はどうやら生徒会室らしい。なのにこの一角にある畳のスペースは何だろう。
私は何度も帰ろうとしたが、その度に止められ、いい加減めんどくさくなった。俺が仕事終わるまで手伝いするなり勉強するなり寝るなり好きにしてもいいと言うから迷わず私はソファーに寝転がった。


「ってマジで寝るのかよ…。」


横になるとすぐに瞼が落ちてきて眠気が襲った。意識が微睡む中、最後に聞こえたのは呆れたような不知火の呟きだった。





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