11 コンコンコン 響くノックの音で目を覚ました。どうやら寝ていたらしい。目が覚めても変わらない現実に舌打ちをした。 コンコンコン まだ響くノック。しつこい、居留守を決めてやる。 ベッドに寝転がったまま、鞄を引き寄せる。中のポーチから飴を取り出し、袋を破ると口に放り込む。カラカラと歯に当たる飴が甘い。ブドウ味…気分的にはラムネが良かった。 コンコンコン まだ鳴るノック。なかなか相手もしつこい。 ついでに携帯を鞄から出す。開いたディスプレイの左上には圏外の文字。開いたファイルに収められた沢山のプリクラと写真。もっと撮っておけばと良かったと本気で後悔した。 コンコンコン 粘るノック。あぁもう、誰なんだ。さっさと帰れ。 「名字?居留守してないでさっさと出て来い。」 今度は声も響く。これは… 「なんだよ、ストール。しつこいんだけど」 「お前が無視するからだろう。それと星月先生だろ?」 仕方なく起き上がり、首に緩く巻かれたストールが目に入る。これ、締めてやろうかという考えがちょっと過った。 何の用か聞いたら、差し出された紙袋。中身を開いたら綺麗に畳まれた服。ブレザーとスカーフが入っている辺りから制服だと思う。 なにこれ、私まだこの学園に入るだなんて言ってないのに。そしたらもしお前が入ると決めたら必要だろうと笑うストール。なんでそんな分かった口振り…。 「明日暇なんだろう?どんな所か見に来いよ。それで決めるのも悪くないんじゃないか?」 なんでそんな必要があるんだ。こんな世界で学校に行って勉強する必要性を感じない。私は行く気はさらさら無かった。 ストールはそれと…と言葉を続け、もう1つ袋を出した。次は白いレジ袋。中にはパンやおにぎりが入っていた。 「夕飯だ。本当は食堂で食べるんだが、流石に編入前は行けないだろう?男ならともかく、女なら尚更」 「別にいらないのに」 「駄目だ、ちゃんと食べろ。倒れるぞ」 最後に絶対食べろよ、と念を押した後、ストールは帰って行った。 貰った2つの袋を眺める。正直、どちらもいらない。学校に通う理由も、物を食べて生命を繋ぐ意味も、今の私には分からなかった。ベッドに2つの袋を放る。時間を確認すると確かに夕飯時だった。でも不思議とお腹は空いてなかった。代わりにイライラが溜りに溜まっていた。 夕飯を食べる代わりに、イライラを流しにシャワーを浴びることにした。 ← |