encounter 梓と出会ったのは選択授業だった。 「おーし、しばらくこのペアで授業進めていくからなー。お前ら仲良くやってけよ!」 この選択授業担当の直獅先生が明るく言う。しかし私は隣から感じる異様なオーラにカチカチになっていた。 隣に座るは木ノ瀬 梓、この学園トップクラスである宇宙科の次席だ。天才という肩書きで有名人な彼を一方的に知る私は内心で冷や汗をかいていた。これは…絶対足引っ張る! 横目で見る木ノ瀬くんは頬杖をつきながら、直獅先生の話をつまらなさそうに聞いている。ついでに無表情だ。 おおよそ私がペアで喜んでいるようには見えない。寧ろ面倒だと思っていそうだと勝手に被害妄想を膨らます。彼はそれくらい無表情だったのだ。 これは…本格的に仲良くやっていくなんて無理な気がしてきた。 「ねぇ」 「は、はい!」 「力みすぎ」 急に呼ばれたと思えば、彼はそう言って少し笑った。私の返事がツボだったのか、クツクツ笑い続ける。 「どうせ宇宙科だとか天才だとか、僕がそんなんだから緊張してるみたいだけど、一応同い年だから」 柔らかい表情で忘れていた事実を指摘する。そうだよね、宇宙科とか天才とか、それ以前に彼は同じ高校1年生なんだ。上がっていた肩が少し軽くなって下りた気がする。 無表情だなぁと思っていたけど、思ったより柔らかい表情をする。と言うか自分で天才だって分かってるんだ。自慢気にするわけでなく、他の人を紹介するかのような言い方だった。 小さい頃から言われればそう理解するよと木ノ瀬くんは呆れたような表情をする。そんな鼻に掛けないところが、これからなんとかやっていけるんじゃないかと思えた。 「よ…よろしく木ノ瀬くん」 「梓」 「へ?」 「ペアで一緒になるのに堅苦しすぎ。梓でいいから。まぁよろしく名前」 そうあっさり呼ばれた名前にドキリとしながら手を握る。梓よろしくねと恐る恐る言うとそれでいいと言うように微笑む。その笑顔はすごく綺麗だった。 一時期をやり過ごすだけじゃくて、ちゃんと仲良くなれたらいいなと思いながら前を向く。直獅先生がだいたい自己紹介が終わったと判断したのか、授業が再開された。 この頃はまだ恋とかじゃなくて、純粋に友達として近付けたらなと思っていた。 ← |