冗談やめてよ、(本気?尚更だめに決まってる)
「っどうしよう哀ちゃん!!」
地下室の扉を開け放つと、哀ちゃんが物凄く迷惑そうな顔で振り返った。
「騒々しいわね。今度は何よ?」
「俺、完ペキ蘭ちゃんに負けてる!!」
不穏な空気にも負けずに訴えた。こんな話ができるのは哀ちゃん一人だから仕方ない。
「今日も公園でデートしてきたんだけどさぁ…」
コナンが記憶喪失になって一週間。俺は宣言通り、毎日コナンに会いに行っていた。小学校の授業終わりに間に合うよう、早退ばっかりしているから、そろそろ青子あたりに怒られるかもしれない。
とにかく、俺が迎えに行くと、コナンは素直についてくる。俺に懐いたというよりも、少年探偵団の面々とあまり上手くいっていないみたいだ。まぁ、子供たちが戸惑ってしまうのも分かるし、コナンが彼らに連れ回されないのは俺にとって都合がいい。できるだけ長く二人っきりで過ごしていたいから。
そんな訳で今日もコナンを迎えに行って、公園のベンチで得意のマジックを披露していたんだけど…
「快斗兄ちゃんは…新一兄ちゃんに会ったことある?」
「勿論あるよ」
真剣な顔をしたコナンに聞かれて即答した。
ていうか今現在会ってるしね、と心の中で付け加える。
「…新一兄ちゃんってどんな人?」
「えっとねー、とにかく新一は推理オタクだね。暗号とホームズに目がなくて、自分を犠牲にしてでも他人を助けちゃうくらい優しくて、すごい美人で、男前で、かっこよくて、俺が唯一認めた名探偵!」
本人に分からないのをいいことに、嬉々として褒め言葉を並べたてる。
するとコナンがしょんぼりしたように俯いた。
「…そんなにすごい人なんだったら、僕じゃ勝てないよね」
「へ?」
「僕、蘭姉ちゃんのことが好きみたい」
2010.3.25
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