定番

王様らしく本日の執務――という名の書類にサインするだけの単純作業――をきっちり終え、だだっ広い自室に戻ってきたら。

「……ッ!?!?」

物凄いモノがおれを待ち構えていた。

「ご飯にします?お風呂にします?それとも俺?」

コンラッドだ。声は一応いつものコンラッドだ。顔も同じだ。問題は台詞と服装な訳で。

「……とりあえず脱げ」

「おや。珍しく積極的ですね」

「いやいやそういう意味じゃなくて!その寒すぎるふりふりレースもたっぷりエプロンを一刻も早く脱いでもらいたいんだけど!」

せめてもの救いは裸エプロンじゃないことか。もしも彼のそんな姿を見てしまったら……トラウマレベルの恐ろしさである。トラウマどころか犯罪だ。彼の兄に泣き付くこと間違いなし。

服をちゃんと身につけていたところで、直視することは不可能だけれど。

「ユーリ、そんなに照れなくても」

コンラッドは色々と勘違いしている。

「照れてねーよ!だいたいそんなのどっから持ってきたんだ!?」

「猊下からいただきました。これを着てあの台詞を言えばユーリが喜ぶと。日本では新婚さんごっこと呼ばれているんですよね?」

騙されてる。騙されてるよ、コンラッド……

「ちがうんですか?」と小さく首を傾げた恋人は、泣きたくなるくらい全然可愛くなかった。そもそも。

――そのエプロン絶対に女の子サイズだろ。



END

いい夫婦の日。
2013.11.22




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