貴方の為に死ぬことより貴方の為に生きることのほうがずっとずっと難しい

 激しく行き交う車の音が、ノイズのように響いてる。

「待ってくれ」

 あなたの声に、僕はゆっくりと振り返った。

「どうして?」

 歩道橋の上に、人影が二つ。

「おまえが…好きだからだ」

「…どれくらい?」

「おまえのためなら、死ねるよ」

「…そんなのちっとも」

 嬉しくない。



 それでも、死ぬのは止めて階段を下りた。

 これがあなたと交わした最後の言葉。




 喪服の中に混ざった濃紺のブレザーが、まるで模様みたいに並んでる。
 はためく赤い布は花束かな?明るかったあなたにお似合いだね。


 交通事故、
 一瞬のことで、
 雨で視界が、
 …即死。


 あなたの昔の恋人が、大きな声を上げて泣いてるよ。慰める友達も震えてる。
 真っ黒な世界で、キラキラ光るのは頬の水滴。
 この中で一番綺麗じゃないのは、渇き切った瞳をしたカサカサの僕だ。

「大好きだよ」

 柩の中のあなたに囁いた。

「愛してるから、生きるよ」

 矛盾してるようで何も、間違っていない。
 独りぼっちで死んでいったあなたのために。
 追い掛けるなんてきっと狡いから。
 僕は生きるよ。あなたを想って独りぼっちで。



2010.3.11

title:MAryTale




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