「何だよ、人の顔じーっと見たりして」
「キスしてくれないかなって思って」
「はぁ?!」
だってそういう夢を見たんだ。期待したくなっても、仕方ないよな?
「誰がするか、バカ」
「バカって…」
酷くない?
でも、そっぽを向いたコナンの耳が赤いから。
呆れられたんじゃなくて照れてるだけなんだとすぐに分かる。
まぁどっちにしろしてくれる訳ないかと肩を落とした時、
「おまえドロボーだろ。欲しいんなら勝手に盗ってけば?」
耳を疑いたくなるような言葉が聞こえてきて、思わずコナンの横顔を凝視した。
更に赤くなっているように見えるのは、絶対に気のせいじゃないと思う。
「じゃー遠慮なくいただきます!」
言うなりコナンの頭を引き寄せて、その柔らかい唇に口づけた。
「…んっ、」
軽く触れただけで離れるつもりだったんだけれど。
「っおい!」
おそらくは文句を言うために開かれた口腔の中にまで深く侵入して。
舌を絡めようとしたところで、鋭い痛みを感じて飛びのいた。
「いたたたたっ」
コナンに思い切り襟足を引っ張られたのだ。
「お、俺はっ、そこまで許可した、つもりはねぇっ!」
息切れしたコナンはうっすらと涙目で。
それを見てなけなしの理性がぐらりとしたけれど、その細い指に数本の髪の毛が絡んでいるのを見て、もう一度キスするのは諦めた。
――抜けるほど引っ張るなよな。
自分の所業は棚に上げて、内心で毒突く。
うっかりそのまま襲いそうでしたなんて言ったら何されることか。想像するのも恐ろしいから。
「だって俺は怪盗だし?」
「意味わかんねーよ」
何でもない顔で、笑ってみせた。
2010.3.21
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