手は届かないのではなく、伸ばすことすら、出来ない

今日もまた君と擦れ違った。
君は俺のことを知らない。知ろうとも思ってくれないだろう。敵でしかない泥棒のことなんて。
学校帰りの君と初めて擦れ違った時は、隣の幼なじみに不審がられるほど笑ったよ。
ずっと大人の目をした聡明な子供。そんな名探偵にランドセル。似合わなすぎて、いくらでも笑えた。
日を重ねる毎に悲しくなった。君がいつでも笑っていたから。ポーカーフェイスは俺にそっくり。
…そっくりだから、分かるよ?
笑顔の下の、痛みと焦りと、誰にも見せない感情が全部。
見つからないし、見つけてもらえない。何処にあるのかも、本当にあるのかも分からない石ころ、そして目の前にいる、君のこと。

ここで一歩踏み出せば変わるかな。いつもそう思うのに動けない。

「快斗ー?いきなり立ち止まっちゃってどうしたのー?」
「…何でもねーよ」
数歩先にいる幼なじみに呼ばれて、また歩き出す。
背中合わせの変わらない日常。何でもない振りしたおんなじ嘘つき。だけど君はいつだって遠すぎるね。



END

2010.3.12

title:MAryTale


 
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