赤でも進め

 快斗の家へ寄った帰り道。
 送ると言い張って離れない快斗を引き剥がすことが出来ずに、結局二人で探偵事務所に向かって歩いている。

「行き止まりって、信号待ちに似てると思わないか?」

 途中の大通りで、なかなか変わらないと評判の信号に引っ掛かった。
 この場所に立っている時は必ず、じれったいような苛立ちを感じるのは何故だろう。
 考えていたら、言葉が零れた。

「一見、車が激しく行き交っていて渡れそうにない。でも、きっとそれは幻なんだ」

 キュッと指が絡まって、快斗の顔を見上げる。

「今飛び出したら轢かれるよ?」

 繋がれた手。引き止めるかのように、強く絡まる。

「…バーロ。んなことしねぇって」

 快斗を道連れになんて出来ないから、大人しく信号の前で待っている。

 組織の手掛かりを、掴んだ。だが、情報は少ない。危険すぎる。
 だから今までと変わらず行き止まり。

 飛び出したら轢かれる。よく分かってはいるけれど。

「お、やっと変わった」

 手を繋がれたまま、歩き出す。

「もういいだろ。離せよ」

「ダメ。どっか、行きそうだから」

 歩行者の為に明け渡された安全な道路。そこに、求めるモノなど何もない。

 その手を、いつまでも離さないでいてくれれば。
 そんなことを、心の何処かで望んで、しまうけれど。でも。
 信号が変わってからでは何もかも遅すぎる。



END

2010.4.23


 
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