コナンくんを、返してよ…
泣き崩れた歩美に声を掛けることもできず、ただひっそりと立っていた。
組織はある程度潰して、APTX4869も手に入れた。そして灰原が作り出した解毒剤で、俺は工藤新一に戻った。
ただし、組織の残党はまだいるはずで。
身を潜めるように過ごしていた。
工藤新一は死んだはずの人間だから。いや、それ以上に。
血眼になって捜されてしまうのは江戸川コナンだ。
あまりにも組織に顔が割れすぎた。だから。
…殺してしまうしか、なかったんだ。
仕方なかった。外国へ引っ越したなどと嘘を告げても、組織のメンバーは世界中にいる。行き先を聞き出すために、周りの人間が巻き込まれるかもしれない。そんな事態は絶対に許せなかった。
江戸川コナンは死んだ。爆発に巻き込まれて死んでしまった。適当な遺体を見繕って、本当のように見せた。
自分の葬式に参列するというのは非常に奇妙な心持ちだ。
生きているのに死んでいる。子供達を慰めることすらできない。
変装しているから、知り合いの男だということも分からないだろうし。
俺の手は、あの子達には届かない。
歩美や元太や光彦のことを、灰原が必死で宥めている。
ちらりと、責めるようにこちらを見る。
仕方、なかった。
灰原は、最後まで納得しなかったけれど。
何もかも全てが痛いと、思う。
そして、泣き崩れる歩美や蘭、刺さるような灰原の視線、それらよりも、もっともっと痛いものがある。
隣で静かに涙を流す男の姿。その泣き顔が一番、痛かった。
快斗なら、
快斗なら全て分かってくれると思ったのに。理解して、受け入れて、ひっそりと生きていく俺の隣に立ってくれると思ったのに。どうして。
どうしておまえまで、そんな目で。
泣きながら責めるように俺を睨むんだ。
END
設定が適当ですみません…
2010.4.21
title:MAryTale
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