「今日、授業中に昼寝してたらさ…」
ぱしゃりと湯を跳ね、快斗が言う。
「コナンに耳が生えてる夢見た」
「耳なんて元からついてるじゃねぇか」
ない耳が生えてくる夢だったら不気味だな、と思わずグロテスクな想像をしてしまった。
「じゃなくてアレだよ、猫耳」
可愛かったなぁ。
湯舟の縁に肘をついてニヤニヤ笑う。
「………」
「引いた目で見ないで。傷つくから」
しょげた顔で言われたが、変な夢を見る方が悪いと思った。
「…夢ん中でも酷かったんだよなぁ」
「俺がか?」
「そ。鳴きながら擦り寄ってくるから抱き上げようとしたら、顔面引っ掻かれて目が覚めた」
言いながら泡を手にとって俺の頭に乗せる。即席猫耳を作っているらしい。
人で遊ぶなよとムッとする。しかも髪を洗った後だというのに。
「…その夢、今すぐ再現してやってもいいぞ」
つまりは引っ掻いてやると言ったつもりだったのだけれど。
「マジで!?」
嫌がらせ半分の冗談に、快斗は嬉々として乗ってきた。
「コナンが“にゃあ”って言ってくれるなら、引っ掻かれるくらい別に構わ…て、ちょっと待った!」
「なんだよ?」
顔色を変えた快斗の視線の先は、泡を洗い流すために上げた両手の指。
「コナンちゃん爪伸びすぎでしょ!それ絶対に凶器だよ…」
「そうか?」
そういえば、最近忙しくて切った覚えがなかったような。
「……夢って、叶わないものだよね…」
気の抜けたため息が立ち上る湯気をふわりと揺らす。
ガッカリする快斗に付き合っているといい加減のぼせる気がしたため、
「おまえはいちいち大袈裟なんだよ」
そう返してさっさと浴室を出た。
END
だからなに?っていう感じの話。
2011.2.22
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