*直接的な言葉が出てくるため、念のためR12です。
年齢が満たない方は自己責任でお読みください。



秋の肌寒い朝の空気で目を覚ました伏黒は部屋を温めるため、暖房の電源ボタンを押しに布団から出た。一晩の間に部屋全体が冷えきってしまったため、温まるまでにはまだ少し時間がかかる。と、さっきまで入っていたベットに戻ると自分の横で寝ていた名無しの寝顔が目に入った。幸せそうに寝ているその顔を見て、伏黒の心は自然と温かくなった。
布団の中に戻るため掛け布団を少し捲ると一糸まとわぬ姿で寝ている名無しの豊満な胸と薄ピンク色の頂が見え、昨晩のことを思い出した伏黒の体は少し熱くなった。

半年前、無事名無しに取り憑いていた神様が土地神として神社に帰り、恋人関係である伏黒と名無しも自然とそういう行為をするようになった。神様がまだ名無しに取り憑いていた時は、名無しが処女でなくてはいけなかったため、事情を知っている人たちから、せっかく付き合っているのにそういう行為ができなくて残念だな。と言われることもあったが、元々、伏黒も名無しも性欲が薄く、互いにそばにいてくれるならそれだけでいい。という考えだったため、付き合った後もキスをすることはあるが、それ以上の行為をしたいとは思わなかった。しかし、いざ、自由の身になると隠れていた欲が見えてくるもので、3ヶ月前に初めて2人は体を繋げた。ただ、やはり2人にとってそれほど必要な行為ではなかった為、月に1、2回程度しかそういった行為を行わなかった。


「ん〜ぅ」


伏黒が掛け布団を捲ったことで冷気が布団の中に入ってしまい、仰向けに寝ていた名無しは少し寒そうに伏黒の方を向いて身じろいだ。その様子を見た伏黒はこれ以上名無しを寒がらせないように。とすばやく自分の身を布団の中に入れた。
伏黒が名無しの方に体を向けると、名無しの胸の谷間に挟まるようにして抱きしめられているブサカワなぬいぐるみと目が合った。それは初めて伏黒と名無しが2人で街に出かけた時に伏黒がクレーンゲームで取ってあげたものだ。名無しがこまめに手入れをしているおかげで、長い年月が経った今でもそのぬいぐるみは綺麗なままだ。神様からは「貴様はなんと珍妙なものを名無しに贈ったんだ!」と散々罵られたが、同時にこれのおかげで名無しが眠れるようになったことを聞き、安心したのを伏黒は今でも覚えている。

いつも情事の最中に気絶して眠ってしまう名無しになんとか風邪をひかないように服を着させてから寝かせたいと思った伏黒だったが、情事で散々伏黒にいじられて敏感になった名無しの身体は少し触れただけでもビクビクと反応し、その度に色っぽい息を漏らすため、それに耐えきれなかった伏黒は名無しの身の安全のためにも服を着せることを諦めざるを得なかった。苦肉の策で上からモコモコのブランケットをかけるようにしたが、意外と寝相が悪い名無しの身体に朝までそれがかかっていることはなく、今も背中の後ろでぐるぐるっと丸まって役割を果たしていない状態だ。せめて部屋が暖まるまでの間だけでも。と伏黒は名無しの背中の方に腕を伸ばし、そのブランケットを手にとり、名無しの背後からかぶせた。その際に、首元から胸元にかけて赤い印が点々と浮かび上がっているのが目に入り。伏黒はまたやってしまった。と頭を抱えた。今は布団に隠れて見えていないが、名無しの足先から首元まで満遍なく付けられている赤い印はいわずもがな全て昨晩伏黒がつけたものだ。
愛撫の際に優しくキスしただけでもすぐに赤く印が付いてしまう名無しの繊細な体は、行為を行う度にその体中にたくさんの印が残していた。ようやく明るい環境でその印を見た伏黒は、またこんなにつけてしまった・・・・と反省した。
行為の最中は、一倍恥ずかしがり屋な名無しが「真っ暗じゃなきゃ恥ずかしくて死にます!」と言うため、常に部屋を真っ暗にしている。比較的とり目な名無しはこれで伏黒に自分の体も表情も見えていないから大丈夫だ。と安心しているが、比較的夜目な伏黒は部屋が真っ暗であっても、ある程度名無しのことは見えており普通に行為を行う分には何の問題もなかった。もちろん名無しにこのことは秘密にしている。しかし、見えている。と言っても、どこに何があるかがわかる。というぐらいで細部までは見えていない。そのため、毎回朝になってから遮光カーテンから漏れ出る光でようやく行為の最中に自分が名無しの身体につけた赤い印の存在を知る。


「さすがに多いな・・・・」


行為の最中は名無しを気持ちよくさせることだけに意識を集中しているため、いつも冷静になってから名無しの身体を見て、伏黒は自分が付けた赤い印の数の多さに驚くばかりだった。そして、今日のは過去一番数が多かった。すぐに痕が付く癖に、痕が消えるのは人一倍遅いため、夏に初めて行為を行った時に名無しから見える位置はなるべく避けて。と言われたばかりだった。これはマズい。と伏黒は思った。特に一番赤く色づいている首元の印をそっと触ると名無しが薄っすら目を開いた。


「恵さん・・・・」
「悪ぃ。起こしたな」
「ん〜・・・・」


一度目を開いて伏黒の顔を見た名無しはぬいぐるみを抱きしめたまま伏黒の胸元に顔を埋めた。そして、「ぅ〜ん」とまだ意識がぼんやりとしている様子でまた目を閉じた。
神様が取り憑いていた時は毎日のように早起きをして滝行をしたりおはぎを作っていたからてっきり名無しは朝に強いのかと伏黒は思っていたが、意外にも名無しは朝に弱かった。話を聞いてみると、神様が取り憑く前は普通に家を出る30分前に起きていたようで、その話を聞いた時はさすがに伏黒も驚いた。なぜなら、神様が取り憑いていた時は一緒に住んでいる伏黒ですらそんな様子を一度も見たことがなかったからだ。神様に気を使わせないように苦手でも頑張って早起きしていたのだと思うと、人のためならどんなことでも頑張れる名無しのことを尊敬せずにはいられなかった。伏黒は自分の胸元に顔を埋めている名無しに手を伸ばし抱きしめると、名無しは目を閉じたまま口を開いた。


「伏黒さん、体が少し冷たいです」
「今、暖房付けるのに布団から出たからな」
「そうだったんですか。ありがとうございます。では、私が温めてあげます」


片手を伏黒の脇に刺し入れ背中に手を添えた名無しは「ぎゅー」と、口で効果音を発しながら伏黒の体に自分の体をぴったりとくっつけた。


「っ!」


その瞬間、自分と名無しの間にあった手がなくなり、名無しの胸や肌の感触が服越しに伝わった伏黒の体は一気に熱くなったが、それをごまかすように名無しの頭を優しく撫でた。


「体、大丈夫か?どこか痛いところないか?」
「どこも痛くないですよ。恵さんがいつも優しくしてくださるので大丈夫です」


毎日のように怪我をしていたせいか、それとも元々我慢強い性格のせいか、はたまた両方か、名無しはよく痛くても我慢することがある。だから、伏黒は情事の際に人一倍名無しの体に気を使った。特別なにか勉強したわけではないが、初めて挿入する時はもちろん、女の人は挿入時に痛みを感じることを伏黒は知識として知っていた。だからこそ、毎回行為を行う時は、1時間以上かけて丁寧に名無しの体に愛撫を行っている。その甲斐あって、挿入する頃には名無しの膣はすっかりぐずぐずになっており、伏黒のモノもすんなり受け入れているが、それでも、自分が気づいていないだけで名無しは痛みを感じているのではないか。と伏黒はいつも心配で仕方がなかった。


「すみません。私また途中で気を失ってしまったんですね」
「いや、お前が気持ちよかったならそれでいい。そのためにしてるんだから」


しかし、逆に名無しはそんな伏黒に申し訳ない。と感じていた。名無しは伏黒の愛撫の際に何度もイっているが、伏黒はまだ一度も名無しの中で果てたことがない。いつも的確に名無しのキモチイイ部分を刺激する伏黒の愛撫は名無しに天国とも地獄とも言える快楽を与えた。しかし、その快楽があまりにも強すぎるため挿入する頃には名無しは毎回虫の息だった。そんな中、トドメと言わんばかりに挿入されれば意識を失ってしまうわけで、いつも伏黒は挿れるだけで終わっていた。こんなにも自分は気持ちよくしてもらっているのに、伏黒には何もできていないことを申し訳なく感じている名無しはせめて伏黒が果てるまで意識を失わないように愛撫の時間を短くしてもらえないか。と思っているが、初めて行為を行った時に、名無しになるべく痛みを感じさせないように。と伏黒がたくさんの時間をかけて愛撫を行おうとしていたのに、自分のためにそんなことをしてもらうのは申し訳ない。と思った名無しが、愛撫もまだ始めたばかりでまだ膣が濡れてもいない状態にも関わらず「もう挿れても大丈夫です」と言った時の伏黒の怒った顔が今でも忘れられず、そのことを言えずにいた。


「恵さん。いつもすみません」
「お前が謝ることなんて何もねぇだろ。むしろ、俺が・・・・いや、なんでもねぇ」
「?」


何か言いかけて止めた伏黒を見つめた名無しは首を傾げたが、伏黒はそんな名無しの視線から逃れるようにスッと目をそらした。


「名無し、何かして欲しいことあるか?」


伏黒はいつも名無しに対して優しいが、行為を行った次の日は特に優しい。しかし、それはあくまで体を気遣うという範疇の話で、いつもなら名無しに聞かずとも名無しがすることを先回りして行ったり、名無しがなるべく動かずに済むように色々と察して持ってきてくれたりするため、こんな風にわざわざ質問されたのは初めてだった。


「・・・・なんでもいいんですか?」
「あぁ」
「では、・・・・・キスして欲しいです」
「そんなことでいいのか?」
「そんなことだからいいんです」


伏黒は名無しの背中に回していた手を後頭部へと移動させ、顔を近づけてそっと唇に自分の唇を合わせた。短く何度も重ねるわけでも、舌を入れるわけでもなく、ただ触れるだけの優しいキスだ。


「えへへ。ありがとうございます」


伏黒が唇を離して名無しの顔を覗き込むと、名無しは照れたように両手で口元を隠して嬉しそうに笑った。伏黒はずっと自分に『幸せ』という言葉は似合わないと思っていた。だが、名無しの笑顔を見るたびに自分の心が温かくなるのを感じていた。どうかこの幸せが消えないように。明日も君の隣で目覚められるように。祈りを込めて名無しを抱きしめた。

「動けるようならシャワー浴びてこい。その間に朝飯作っておく」と伏黒に言われ、促されるまま名無しは浴室へと向かい、鏡に映った全身赤い痕だらけの自分の体を見て家中に響くほど大きな声で悲鳴をあげたのだった。




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