スマホな彼女series

神永先輩のスマホで撮って貰うとめっちゃ可愛く写る。

噂は何処から立つか解らないが、ここ最近、俺は廊下に出れば女の子達から写メを依頼される事が多々ある。
今日も君が何とかサンは土曜日午後からお暇そうですよ、ホラ、昨日の夜10時頃に呟いてます!嗚呼、ですけれど、どーとかサンは一日お暇みたいです!と真横で俺に情報を差し出す。
じゃあ、どーとかサンを誘ってみるかなぁ、なんて呟いたならば、LINEを開きましょう!と意気揚々と君の方が張り切っている。
本当に。


「神永せんぱーい?」

「お?何々、どうしたの」

「写メ撮って下さい!噂聞いたらめっちゃイイ感じに撮ってくれるって聞いてー」

「アタシも!」


おーおー、ブラスバンドのちょっとレベル高いコ達じゃん。
1つ下の学年だな。
俺はチラリと君を見ると、眼を蘭々に輝かせて俺を見詰める。


逸る気持ちを駄々流しにして、早く撮りましょ!と促すように何度も頷く姿は栗鼠(リス)みたいだ。
良いよ、なんて一つ返事で、カメラを起動させ、フィルター越しに女の子を見やる。
しかし、君はフォーカスを合わせながらも俺に待ったを掛けて来た。
んー…と小さく唸っているかと思えば、後ろを振り返り、俺の耳許でコソコソ小声で指摘するのは、女の子の手、指先。
成程ね、とひとつ返事で俺はスマホを下ろし、女の子の手の話題に移る。

「爪、凝ってるね。自分で?」

「爪?ぇ、神永先輩すごーいっ。あのね、このコ、将来ネイリストなりたいコなのね。で、いつもウチが練習台なんですよ」

「しっかり目標持ってるんだ?それこそ凄いじゃん!香水瓶みたいに見えるね」

「パフューム柄ー。自分でやっといてアレだけど、マジでお気に入り!」


君はまじまじとそのコの指先、爪を見て、俺に指示を出して行く。
窓際に立たせて下さい、斜めに首を傾けて、左手を指先三本をピッタリ揃えて軽く左目に添えて、態と表情を作らせないで…。
何度かスマホのシャッターをタップしながら、写メを撮る。


一度その写メの画面を見せれば、わぁっと二人して明るく賑やかな声が上がった。
君はその声にうんうん、と頷き納得しては次には加工アプリを厳選して行く。
ニキビ痕をピンポイントで消去、肌のトーンをアップさせ、髪にのみ少しだけスノーを降らせ、ホワイトフィルターを掛ければ完成のようだった。


「ハイ、こんなもんでどうかな?」

「マジで、ヤバイ!ウチがめっちゃ可愛い!何か美少女ー。盛れ過ぎててヤバイ!」

「マジで凄…。実物こんなんなのに、めっちゃ美少女じゃん!騙される!ってか騙せるー!」

「ぁ、じゃあ送りたいからLINEとか教えてよ」

「はーいっ」


君は女の子の達の賛辞に満更でもないようで、満面の笑顔で俺の腕にぴっとり寄り添って来る。
LINEも教えて貰えて一石二鳥ですね!と首を傾ける姿が愛らしい。
何度も振り返って嬉しそうに俺に手を振る女の子達を見送りながら、君は両手を胸元でふわふわと振っている。
女の子達は、可愛い。

可愛いんだけれどな…。



「あのコのネイル、可愛らしかったですねー。凄くお上手でした」

「そうだね。良く気付いたね」

「神永様も気付いて下さるじゃありませんか、私に。同じですよ?」


君の退屈凌ぎように雑誌を購入する時もあるのだが、一緒に見ていると表紙は手先まで写っている表紙が多い。
それはいつからか、モデル質が折角その撮影や時季に合わせ塗り替えるネイルまでも魅せる事が出来るように。
モデルのネイルまで見せる事で洋服との相性を教える為だと君は言う。
手元を顔の輪郭や側に置く事で小顔に見せるのは勿論だが、やはり指先にまでモデル達はお洒落の余念を欠かさない。
女の子の共感を得るのは大変なお仕事ですわねー、なんて俺とベッドに転がりながら頁を捲っていたっけ。
いつの間にか、君の指先も凝ったネイルが咲いている。


「まぁ、ずっと見てるからね、君を」

「私の事はずっと見ていられるんですか?」

「だって、君は俺のスマホだもん。ねぇ、女の子達はあんなに可愛く撮れるのに、俺はどうやったら君を可愛く撮ってやれるんだろうな。こんなに可愛いのに」


ショップの最新機種がズラリ並んだケースの中で、カメラの画素数を一番重視して選んだ。
そう、君を取った瞬間、眼に一目惚れだった。
飾れた君の手を握り、まじまじと見詰めてみせる。
この飾れた指先で、俺に必要な情報を集めてくれるんだよな。
飾られた指に自分の指を絡める。
そして、君のこの曇りがない硝子の様な眼。
君が素敵な眼を持っているから、女の子達は何倍も可愛く撮せるが、そんな君を俺はどうやったら可愛く撮せるだろう。
遺せるだろう。


「可笑しな神永様!いつも撮して下さるじゃないですか。シャッターをタップするには、私を見詰めていないと出来ませんよ」

「そりゃ、君越しにしかあのコ達を撮せないよ」

「もう、何度も何度もその格好良い瞳で見詰めるんですもの!フォーカス合わせる度に見詰め合うから照れますのよ?」


「…そうなの?」

「神永様が私を丁寧に扱う限り、私は劣化致しませんから。どうか一秒でも長く私を使って下さいませね」


約束ですよ、なんて綺麗に微笑んで来るから、絡めた指先の力を強める。
大事に、丁寧に扱えば、君はずっと俺の物。
俺の目が撮していられる。


「君以外を使う気は俺はないよ」



fin…xxx
1016/9/13:UP



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