04:SINUNA☆KOROSUNA★ラブストーリーは必然に!!
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昨日の夜中からずっとウェザーリポートを確認していた。
予報では明日の出勤ラッシュ、若しくは
数時間後には降水確率100%。
明日は公休、しかし、君が出勤ならば1日休む事で今回も作戦を破綻させる訳には行かない。
プランは完璧、イメトレもばっちりだ。
数秒違(タガ)わず、君と運命を共有しよう。
偶然は装われるものであり、即ちそれは、D課の人間ならば必然であり運命としなければならない。
うん、近くで見る君の私服がこんなにも眼の保養になるとは。
君の私服で今日の昼寝は最高のものになるな。
いや、漸く結ばれるとなると、逸る気持ちが抑えられず、プランを練るに練って、君の写メに接吻(クチヅ)けるだけで、俺はいてもたって…おっと、これ以上は言えないな。
未だお昼にもなっていないからね。
え?盗撮じゃないのかって。
ハハハ、まさか。
俺はただ、君の後ろのインテリアを写メっただけさ。
そこに偶然、君が写った。
ただ、先程も言ったけれど、D課の人間に偶然なんて在っちゃご法度だよ?
察してくれると有り難いな。
「では、此方は新宿店に届けますね。そして、明日はヤナちゃんとシフト変更で宜しいですか?」
「うん。ごめんね、休みだったのに。態々有難う、助かった」
「いいえ、構いませんよ。お互い様です。でも、ヤナちゃん、時間変更だけで大丈夫ですか?何でしたら、明日、一日出ますよ?」
「本当に?じゃあ、ヤナちゃん、一日休みにしようか」
「では、明日は9時出勤しますね」
「ごめんね、宜しく頼むよ」
そうか、じゃあ明日は一日君の盗撮…じゃなく見守る一日になりそうだな。
楽しみだ。
さて、雨が降り出して、そろそろ少し酷くなって良い感じだ。
傘が必要な程に振り出してくれたのは好都合。
新聞を折り畳み、脇に挟んで片手にはテイクアウトした珈琲。
いざ行かん、外へ!
ぁ、屋根あるけれどな。
「ゎ……やっぱり降り出したわね」
チラリ。
視線だけ左に寄せれば、ぁ、もう少しで谷間見えそう。
もーちょい!後少し!頑張れ俺の眼力!
………チッ、無理か。
君のガードは堅いんだよな、そこも魅力的だけれど。
雨を確認するかの様に腕を伸ばして、手を空に差し出す仕草も可愛らしいけれど、頼むから伸ばすならば、もっと!ぐっと!思い切り伸ばしてくれ。
じゃないと、脇腹見えないだろ?
腹チラ見たい!…。
結構、甘利と粘ったのに、この扱いか。
フッ、そろそろ話し掛けてくれても良いよ?
仔猫ちゃん?
「…お客様、傘はお持ちですか?」
ほら、キター!俺の想いは君に愛通じるんだろうな。
嗚呼、そんな杞憂に俺を見詰めて…。
「いや…えっと、」
「ぁ…急に話し掛けて仕舞いまして、すみません。私、このカフェの従業員をさせて頂いておりまして。私服ですので、怪しまれましたよね。すみません」
「いえ、怪しいだなんて、そんな。気掛けてくれるなんて嬉しいな。いつも、丁寧に注文も受けてくれますよね?まさか覚えてくれてるなんて」
ニッコリ、そう、軽やかに笑うんだ、俺。
ニヤけてはいけない。
嗚呼、見上げて来る瞳が麗しい!
「いつもご来店頂いておりますもの。有り難いです。此れからもお仕事でしょうか」
「此処は雰囲気がとても良いので、つい寄って仕舞って。お察しの通り、これからクライアントと会う予定なんです。でも、雨に降られて仕舞いましてね。スーツを濡らす訳には行かないし…」
「そうですよね。お客様に身嗜みがなされていない服装で会われるのは、些か失礼に当たりますでしょうし」
「まぁ…。でも、降られたものは仕方無いので、走ろうかと」
「そんな!あの、宜しければ、此方をご使用になられて下さい」
肩を竦めてみせれば、今にも泣き出しそうな…何て切ない顔を俺に向けるんだ。
今直ぐにでも抱き締めて仕舞いたい。
ギリギリのポーカーフェイスで向き合えば、君は自身の置き傘を恭しく俺に差し出して来る。
君が傘を置いているのも、二日前に把握していたよ、うん。
「でも、店員さんは?無いと困る筈だ。俺は男だか
「お客様!」
……はい」
「此れからもお仕事なので御座いますよね?大切なお取り引きのお客様と会われるのに、濡れたお洋服では格好がつきません。女物で申し訳無いのですが、シンプルですし…ぁ…けれど、やはり恥ずかしいですよね、この様な傘でしたならば…えと…」
「とんでもない!…そんなに考えてくれるなんて、本当に嬉しいな。じゃあ、お言葉に甘えて、店員さんの傘をお借りしても良いですか」
「…!はい、勿論です。お返し頂くのはいつでも構いませんので。お客様のご都合がつかれます時に」
「ぁ…でも、明日から海外に出張だったんだ、俺。えーと、如何(ドウ)仕様か…」
「本当にいつでも構いませんので。気が向かれた時に、ふらっとでも」
「それはいけない。お借りするからには、きちんと確実に店員さんにお返ししなければ、気がすみません。ぁ、返す時に連絡を入れたいな…そうしたら、確実に店員さんにお返し出来る。メルアドとかLINEを教え……いや、駄目ですね。こんな見ず知らずの男に個人情報を教えるなんて…危ないよな」
「お客様…、私、別
「いいや、危ない。店員さん、貴女は女性なのに、こんな俺の様な見ず知らずの男に、大事なアドレスやIDを教えて仕舞うなんて、いけない」
君から視線を外し、然も悲しく影を落とそう。
可憐な意味無い罪悪に苛まれた貴女から、ほら、あと少しだ。
「LINEで宜しいですか?」
「………店員さん?」
「だって、お客様、いつもいらっしゃってますし。聞いてはいけないとは思っていたのですけれど、お電話を受けられていた時にも始終丁寧にお話されてましたよ?先程も、私の迷惑を考えて下さったではないですか。危ない人は、きっと考えて下さいません」
「店員さん…」
「LINEで宜しいですか。QRコード、読み取る方法で良いでしょうか」
「…分かりました。是非、交換させて下さい。俺が読み取りますね」
「どうぞ。……
せと、れいじ様と仰有るのですか、お名前」
「そうです。瀬戸 礼二と言います」
「清潭な雰囲気をお持ちのお客様に、とてもぴったりなお名前ですね」
「店員さんのお名前は…成程。こういうお名前だったんですね。店員さんこそ、素敵です」
「ぇ、嬉しい!母が大事に付けてくれた名前なんです。そをな風に言って下さるなんて…有難う御座います」
「…っ………」
「お客様?」
「いや、笑ってくれたから。綺麗ですね、本当に、貴女は」
「いえ、そんな…!」
「傘、お言葉に甘えてお借りします。後で必ずLINEしますね!」
「ぁ、お客様…、瀬戸様!」
「…、と、はい?」
「お仕事、頑張って下さいませ」
「ハイ。有難う御座います」
「えー、以上。田崎、店員さん、ナレーション、実況及び心境、全て俺、甘利がお送り致しましたー」
「はぁぁっ!?!?いや、何で田崎のヤツ、ちゃっかりアイツと連絡先交換してんだよ。つーか、確信犯だろ!何が運命だ!しかも見たかよ?田崎、交換出来た時に、態と名前知れた癖に、オレ達を嘲笑しやがったからな!?態と口にせずにいたからな!?」
「チッ…田崎め!何であんなにアッサリと彼女のLINEをゲットしてるんだ!?それにあの完璧、少女漫画の運命演出。
……羨ましい…!」
「死ぬな、殺すな、ラブストーリーは必然に★が信条だからね。D課のモットーは」
「親指立てんな、甘利。小田さんも吃驚だわ、ンなの」
「あぁーのぉひー、あのぉーときぃ、あぁーのばぁしょーでぅぇ」
「五月蝿ェ、神永!くっそ、田崎…駆逐してやる!!」
「いやいや、波多野さん。駆逐するだけに留まっては行けませんよ。此処は呪術も加えましょう。彼を呼び覚まします。
オッケー、Google♪チャッキーを売っているショップを教えてっ!」
「ぼぉくぅーらぁーはぁーいつぅ…あれ、メロディ忘れた。佐久間さん、知ってる?」
「残念ながら、俺もその世代じゃないからな。しかし、沁みる曲だよな。良い詞を書かれる、小田さん」
「チャッキーなら、家族ごとボクの部屋に居座ってますよ?三好さん」
「お、実井に福本か。あ、福本、朝は有難うな。お茶、旨かった!」
「それは良かった。しかし、何で会議室に…」
「いたいけなあのコの下着の線を守る事が平和に繋がり、田崎を捜索すると甘利もオマケについて来て、三好の青年である心意気を理解し、さっきは神永から世界を救う考えを聞かせて貰っていたところだ!」
「つまり、下らない事に巻き込まれたんですね、佐久間さん。ったく、このバカども全員くたばれば良いのに。
あ、いや、ハハハ!すみません。つい本音が。ん?あれ…緋櫻さんじゃないですか」
「「「「「……………は?」」」」」
俺、甘利に三好、波多野、神永に佐久間さん一斉に声が重なる。
実井はキョトン、とした顔で此方を向いて、ニッコリ。
あ、この満面な笑顔、やーな予感するよー?俺。
「緋櫻 xxxさんですよね、あの綺麗な店員さん」
つづきますよー。
2016/07/07:UP
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