03:愛は世界を救うと言うけれど
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「あ、甘利ー。ちょい、相談!」
「んー?」
「白とピンクに青に赤、バルーンは何色が良いと思う?オレ的にはエミリンには青に白かな、って」
「バースデーイベントなのか?エミリンちゃん」
「そうそう♪他の客なんかより、一番デカイ可愛いヤツを贈ってやらなきゃだよな」
「エミリン?誰、それ」
「ん?あぁ、今、神永が一押しなキャバ嬢。そのコの為に花やバルーンを贈るんだよ。エミリンちゃんには青と白でしょう。本人公認イメージカラーだしね。波多野はキャバクラ行かないもんなぁ」
「面倒臭い。金出してまで女にチヤホヤされたくねぇもん。てか、何でこっちが金出すのに、向こうの機嫌取らなきゃなんだよ。有り得ねぇじゃん。まぁ、逆だったら、譲るけどさ。
オレ、ちゃんと好きな女いるし」
「俺だって居るよ?もうそろそろ、本気で落としに掛かって、"新しいママ"になって貰わないとな。エマにゴネられてばかりだから…本当に真面目に…」
「新しいママって誰だよ」
「じゃ、青と白!エミリンのイメージカラー。ハートだらけにしてやろ。
で、何で三好は泣いてた訳?」
自棄に上機嫌で、〜ッスよーなんて訳分からない鼻歌歌いながら入って来た神永が、そのエミリンとかいうキャバ嬢の写メをオレに見せて(全然好みじゃなかった)、ニヤニヤ気持ち悪く相談を甘利にしていた頃、漸く和解したらしい三好は泣き止み(本当に下らねぇ…)、神永を睨んでいる。
ぶっちゃけ、何でこんな奴が一番腕を買われてるか些か不思議だからな。
キモいし。
「泣いてません」
「いや、目、真っ赤じゃん?何、フラれた?ついに?」
「フッ。この僕が?フラれる?馬鹿も休み休み言って貰いたいですね、神永さん。どれだけキャバ嬢に入れ込んでも、毎度毎度フラられるのは貴方じゃないですか」
「…ぇ、何でオレが喧嘩売られるんだよ。つーかアレっしょ。三好が好きなのって、あのカフェの綺麗なお姉さんだろ?」
「だったら何です?その汚れた口で彼女を語るな、腐るだろう」
「未だ名前も知らないの?」
「…………」
「メルアドは?LINEは?」
「………」
「Twitterは?Instagramは?」
「…………」
「ちょ、マジで?何も知らないの?ゎー…本気で話したりしてないのか」
「っ…悪いか?!僕だって話したいさ!メルアドだってTwitterだってLINEだって知りたい!お早うからお休みまでやり取りをしたいんだ。でも、出来ないんだよ…っ…く…」
「おい、神永!折角、俺が泣き止ませたのに、また泣かすな!苦労したんだぞ?!」
あーあ、二度目の撃沈食らった三好がまたいじけてる。
佐久間さん、必死に宥めてんな。
本当、苦労しいな人になってるし。
「好きならガンガン行くだろ?なぁ、甘利ー」
「んー?でも、俺も本命には慎重に行きたいからなぁ。あのレディには」
「え?甘利もアイツ狙いだったのかよ」
「エマがあの人だったらママにしたい、って推して来るからさ。まぁ、結婚して、エマを正式に養子に迎え入れたいからな、俺も」
「いや、ぶっ飛び過ぎだろ。つか、アイツはやんないし」
「いやだからさ、何で三好はいじける訳?あのお姉さん絡み?」
「まぁ。アイツがさ、今日は珍しくパンツスタイルで、パンティーが透けているのを期待したら、望み薄で撃沈してたんだよ、三好。
…判った、ンな目で見るの止めろって、三好。オレとか佐久間さんも期待してた。見たかったよ、うん、そう。
だー…!本当に面倒臭い!」
「な…!俺は断じて違うぞ!そんな、あのコのぱ、パ、パンティーだなんて…っ」
「そうですよ、期待してましたよ!別に期待しても良いじゃないですか。彼女のパンティー位。何が悪い」
うわ、何か腕組んで開き直りやがった、三好。
神永が何だか妙に神妙な顔して天井を仰いでるけど、絶対にまともな事考えて等いない。
あ!なんて声上げて、三好の顔に向かって指差してる。
ったく、人様に指差しすんな、って習わなかったのか、神永。
「お姉さん、Tバックだったんじゃん?」
「……何ですって?ちょ、神永さん。Could you sey it again?」
「だーかーらー、透けないんだろ?見えないんだろ?Tバックだったら…見えないじゃん?」
「彼女のランジェリーはTバック…?!」
「あーね。合点が行くねぇ。キャバ嬢のコ達もドレスに響き難(ニク)いから多いよ?モデルさん達もパンツスタイルの時にはボトムスに響かないからね。そっかそっかー。あのレディはTバック派かー」
「Tバック…あの、ただでさえ女性のランジェリーは頼り無い薄い、狭い面積しか持ち合わせていない布だと言うのに…。彼女がTバックだなんて…あ、あんなのただの紐じゃないですか?!灘(ナダ)らかな彼女の双丘が露になるじゃないですかっ」
「そう、紐だ。隠してるのか隠していないのか、最早着けている意味が些か不思議な程に皆無な気もするけれど、Tバックは立派なランジェなんだよ。
あのオフホワイトの下には、直ぐに灘らかな柔らかいヒップがあるんだぜ?」
「っ、ゴク……!下には、あると?」
え、生唾ものなの、か?
何か、マジでヤバイ気もするけど、止める気はない。
だって、オレ、基本が面倒臭がりだしさ。
神永が三好に肩を組み、悪どい顔して炒らぬ事を吹き込んでる。
まぁ、でもそうか。
Tバックね、ぁ…ちょっと興味あるわ、オレも。
「どうせ妄想するなら、色んな事しようぜ?考えてもみ?あんな清純そうな真面目そうなお姉さんが、オフホワイトの下には紐同然のTバック、色はブラックのランジェ身に付けていてさ」
「うん」
「良い雰囲気なってベッド行きました。押し倒して、服を脱がせたら、ブラックのTバック姿が目の前です」
「うん…!」
「それで、お姉さんはオマエと目も合わせらんない位恥じらってて、それでも熱っぽい潤んだ瞳を向けて言う訳。
---こんな厭らしい私でも…。
愛してくれますか、三好さん…
ってさ」
「愛せる!愛せるさ!!僕ならば愛するよ!!どんな彼女でも愛せる!例え厭らしくもと卑しくとも…!」
「想像じゃなくて、妄想しようぜ?妄想は誰に咎められる物じゃない。オレ達の自由なんだからさ。最後まで自分の都合で良いんだ」
「イイ!凄く良いです!神永さんっ」
「だろ?エロは世界を救うんだ。恥じるなよ」
「お前等、世界を救うつもりだったのか?!それならば俺も仲間に入れてくれ!神永っ」
「良いぜ、佐久間さん。皆でエロの世界に飛び込んで行こうぜ!」
「頼む、甘利。マジで止めてやってくれよ。バスケやろうぜ!的流れじゃないから。佐久間さん、可哀想」
「え〜?放っとけば。愛は世界を救うよ、きっと」
「愛はな。アイツ等のはエロだからな。ぁ、つーか田崎は?」
「何か、雨が降りそうだから今日が決戦日だ、とか言いながら……」
バカ三人は放って置くとして、オレと甘利は周囲を見渡したが、田崎がいない。
双眼鏡は置きっ放しだが、顔を見合わせてまさかと、咄嗟にブラインド越しに二人で外を見れば、案の定。
「で、田崎さんはどちらに?」
「あ、正気に戻ったー?三好」
「僕はいつでも正気ですし本気です。で、田崎さんは?」
「…もう突っ込むのも失せるな。甘利、田崎は?ちゃっかり一人だけカフェ入りやがってるけど」
ドリカム宜しく決戦日とか言ったらしいけど、今日は金曜日では無い。
一人だけこのカオスから抜け出したかと思えば、ちゃっかりカフェに入り、あろうことか、アイツの近くで優雅に新聞広げてる。
「何かねー、作戦があるらしいよ?」
「「作戦…?」」
三好と声が重なり、窓越しに様子を窺う…。
つづけ…たいと思います。
2016/07/07:UP
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