- 邂逅
もし、もしもあの時、別の道を選んでいたら。
今はどんなふうになっていたのだろうと――。
地鳴りがする。雄叫びが聞こえる。
鼻腔をくすぐるのは、草花と水の匂い。
ぼんやりとしつつ目を開くと、茂る水草が目に映った。
「……ここ、どこ……?」
やけに全身が重く、手に触れているものが冷たい。
上半身を起こしてみれば、胸から下が川に浸かっていた。
重たい身を引きずって川から出て、耳を澄ませる。
人の声、それも途轍もない数の怒号が、すぐ近くから響いている。
どうしたのだろう。何が起こっているのだろう。
まるでわからず、とりあえず声のする方へ踏み出した。
どうにも思考がはっきりせず、足元が覚束ない。
湧き上がる眠気を退けつつ、森の中へ歩を進める。
「忍か?」
低い灌木を抜けたところで不意に、人の声がした。
それはとても耳に心地よい声だった。
声のした方に首を傾けてみると、そこには鮮やか色彩があった。
まるで陽光のような橙の髪。初めて見るその色彩は、とてもきれいで。
強く、強く目を引きつけた。
そして、ふと、思った。
此処は何処で、彼は誰で、――私も、誰なのだろうかと。
自分の名前すらわからない
さっちゃん登場。……橙だった筈。アニバサで茶色っぽかった気がするけど。