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「だからあ、人のベッドで寝んなってえ」
「ええーなんでー」
「つーかお前暑いんだったら布団かぶるなよ!」
「やーこの肌にあたるタオルケットのしゅわしゅわ感がたまらないのに?」
「しゅわしゅわって何だよ…」

「昔っから変な擬音ばっかりつかうよな」
高圧的な態度で文貴は言った。
学校ではいじられキャラらしい(わたしは中学校から私立だからよく知らないけど)と聞いて、驚いた。この人よくわたしをパシらせるのに。この人わたしのこと蔑むような目で見るのに。(なんだか悲しいなあ!)
まあ確かにほにゃほにゃしててかわいいよ、文貴は。きよえママと揃えば最高だよ。だから何でもしてあげたくなっちゃうっていうか、構いたくなっちゃうのはわかるし、だからわたしよくパシらさせられてるんだろうけど、ちょっとばかしわたしに対しての態度がオレ様っぽくてもそれはそれでいいんじゃないとか、思うわけですよ。

「ねーねー」
「なんかやな予感…」
「ぴんぽーん、アイス買ってきてー?」
「えーわたしがー?」
「他に誰がいんだよー」
「うああ…人使いあらいよう」
「お前にだけだよお」
「そんな特権うれしくない」
「オレねーオレねー白くまのカップがいい」
「わたしも白くまがいいーバニラがほにょほにょしてるからおいしいもん」

「でも行きたくないなあ暑いなあ」
そう言えば「いいからはやく行けよお」とにこにこしながら文貴は言った。ああ、おっかない!
「お前はオレの為に白くまを買いにいくの!ね、行きたいでしょ?だんだん行きたくなってきたでしょ?」こうなったらもう逃げられないので「わかったよう」と渋々体に巻きつけるみたいにしていたタオルケット(しゅわしゅわしてるやつ!)を剥いだ。ベッドでころころしていたから、髪がくしゃくしゃだったけれど、手櫛でささっと整えただけで文貴の部屋を出ようとした。

「ちょっと!そのカッコでいくの?」
「え?うん」
「だめだってそんな薄着じゃあ」
「えー」
「てゆうかなんでそんなカッコなの」
「あんねーキャミソールだとねータオルケットが腕とかにあたるでしょー」
「うん」
「しゅわしゅわして気持ちいいよ」
「わっかんねー」
「えー…」
「いいからほらこれ着てけ!」
「うああ、あっついよー」

文貴のグレーのパーカーがこちらに投げつけられたので、わたしは文句を垂れるふりをしてそれを着た。タオルケット(しゅわしゅわ)と同じにおいがする。
外は多分くらくらするくらい暑いけど、はやく白くまを買ってきて、そしたら文貴がふあふあ笑って、そしたらわたしがまたくらくらして、うん。アイスじゃなくて、わたしがぺろぺろに溶けちゃう。
それってすっごい すてき。


わたしの王子様はふあふあ笑ったよ!

クラムボンはかぷかぷ笑うって聞いたけど、多分それよりずーっとすてきな笑顔だよ



(例えばあなたが好きな子には素直に優しくできなかったり、すればいいのになあ)



(080725)














「どこいくの?」
「どこってえ、ゆうちゃんちでしょ?」
「ちゃんとついて来なよ」
「えええ、来てるよ」
「横に並んで歩けばいいのに」
「…うん」
「振り返っていない時とか、結構怖いよ」

それはごめん、と返事をしたけれど 私はどうにも彼とは歩幅が違うので難しいなと思った。
暑いねと彼が言ったので、そうだねと返す。甲子園の決勝はテレビで見たから、私は夏の終わりを知っていた。

「う」
「…どうした?」
「せみおちてる…」
「あー」
「せみ爆弾!まだ絶対生きてるんだ」
「ああ、びびるよね」
「……」
「あは、大丈夫だよ」
「いやだ、違う道通って帰ろ?」
「大げさだなあ」

「大丈夫だから、ね」
笑いながら彼がそう言って手を差し伸べたので唾をゴクリと飲んだ。喉が渇いていたから、飲み込むときに喉の奥でくるりと回転するみたいな、そんな感覚がした。

「手、汗でべとべとだよ」
「気にしないよ」
「私が気にするよ」
「大丈夫」
「なにが?」
「…ぜんぶがだよ」

「だからほらはやく」
急かすから少し離れた彼の手を勢いよく掴もうとして、そうしたらやっぱり生きていたせみがぐるぐると地面を回転しながら足掻くように私を追いかけてきて、それから青い空の向こうに飛んでいったから、私は思わず涙目になって、そんな私を彼は笑った。笑いごとじゃないのだよ。

「ううう」
「よしよし泣かない」
「せみやだ…絶滅して」
「なかなかひどいこと言うなあ」
「飛行する生命体を好きになれない」
「ふうん」
「…今ばかだなあって思ったでしょ」
「思ってないよ。俺、飛べなくてよかったなって思っただけ」



夏はまだ終わらない


花火もかき氷もスイカも浴衣も、宿題もまだだから、だからここでもう少し、一緒に夏を足掻こうよ



(080819)














月に一度くらいで大変憂鬱な気持ちになると言ったら、「ああ、生理?」そう返してくれた男の子は、誰だったろう。デリカシーの欠片も無い奴だなと呆れて、ただ「違います」と言い返したことは覚えている。違うのだよ。そういうことじゃ、無しに。

「けいすけ」
「相変わらず“い”の発音が強いよな」
「だってみんなけーすけって呼ぶけど、それじゃあけいすけじゃなくてけえすけじゃんか」
「…わけわかんねえよ」
「ばかじゃん?」
「お前がね」

けいすけは友達でも家族でも幼なじみでも恋人でも無い。無いと思う。強いて言うならソウルメイトって感じだけれど、多分そんなこと言ったら浜田と梶山君に言い触らしてまず1週間は間違い無くネタにするだろうから黙っておく。まだどこかから焦げ臭いようなしみったれた夏の匂いがしてくるような気がしてて、世間様は○○の秋だっていうのが大好きな季節になってきているのに、けいすけの部屋の窓を全開にして、月を眺めながら、携帯を開いたり閉じたりしていた。

「あ、メール。うわ」
「なに、どうした」
「サッカー部の坂下」
「へー」
「なんでコイツ私のアドレス知ってんの」
「教えたんじゃん、誰かが」
「あー…聞いたって書いてあるわ」
「ふーん」
「しかも見てこれ、きも!絵文字きもい内容もきもい」
「何でもきもいな」
「メールって何の為にあんだろね」

私が尋ねるとただ「知らね」とけいすけは呟いて、それからまだ夏みたいな顔をしてスイカバーをひとりで食べていやがった。がぶりと噛みつくようにそれを横取りしてやったら、メンズ雑誌に向けていた目をこちらに向けて、チョップをかましてきた。痛い。

「お前、食うなら自分で下行って新しいの出せ」
「めんど」
「お前な」
「だってけいすけ人の話聞いてないし」
「はあ?知らねっつったろ」
「だからもっとちゃんと聞いてって」
「…なんだよ」
「渋々なのが気に食わない…」
「ちゃんと聞いてんだろ」スイカの赤い実の部分が無くなったアイスをけいすけは一口でぱくりと、緑色の部分をぱくりとやってしまって、それから棒は弧を描いてゴミ箱へと落ちる。ナイシュ、と思わず零す。

「メールって、どうしてこうも回りくどいの。誘導尋問みたい、ねえ?気持ち悪い」
「あーうん」
「何の意味があんの。そんなメールに付き合いたくないじゃんね」
「まあ」
「好きなら好きとか、はっきり言えばいいのに」
「あー…」

つまらないと口を尖らせればけいすけはいつの間にかまた雑誌へと意識をやっていて、私は窓辺で膝を抱えた。
ふともう一度鳴りだした携帯に苛立ちながら、それを開ける。

Eメール1件受信中。

受信しました。


梅原けいすけ。


件名 (Non title)


本文 好きだ。




わかりやすい愛でつたえて

思わず保護した。
夏の、終わる日のことだった。





(summergift:101205)

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