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風はなまぬるいみたいだ。外では月が笑っている。
今日はサンジくんのバイトの帰りを待っていて、少しうとうとしはじめた頃にかちゃりとドアが開いた。
お帰り、と一言呟くと、ただいま、と彼は少し笑った。
「ごめんな、こんな遅くまで待たせちまって」
「ううんいいの、遅くまでお疲れ様」
「ありがとう、おれその言葉で頑張れるよ」
「ふふ、そんなこと言ってもなにも出ません」
まったくいつも通りの会話を繰り返す。
それからサンジくんがお風呂に入る前にわたしの額に口付けてくれるのも、ぎゅっと抱きしめてくれるのも、まったくいつもと同じだ。
でもこれは幸せのリピートでもある。
わたしにはこの時間が幸せだった。
かすかに聞こえていたシャワーの水がタイルを叩く音がやんだ。
それから少しして、サンジくんがタオル片手にソファに座るわたしに歩み寄ってきた。
まだ水滴が残っている。
サンジくんが隣に座った瞬間、わたしと同じシャンプーの香りが漂う。
私の視線に気がついたのかサンジくんと視線が絡んだ。
「なんだい?」
「や、なんでもないよ」
「クク、可愛いなァ」
彼は軽く笑って私の肩に腕をまわした。
まだ少し熱い。
そのままサンジくんの肩に頭を預けると、サンジくんは「なに、今日は甘えん坊?」と笑った。
わたしはそうかもね、と小さく頷く。
「ねえ、サンジくん」
「ん?」
「キス、したい」
そうぽつりと呟くと、サンジくんはじゃあ今日は存分に甘えさせてあげる、と笑って、ゆっくりと唇を重ねた。
それはわたしをどうしようもないくらい甘く幸せにする。
まるでアイスがとろとろにとけはじめるみたいに。
YES , NO , YES
(いいよ、って笑って)
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