サメラがティンクトゥラのもとに来てもう直ぐ7年が過ぎようとしていた。 サメラはすくすく育ち、魔女の子と虐げられてもサメラはティンクトゥラの前では明るい様子を振る舞うようになった。 育ての親であるティンクトゥラのためにも。サメラなりの判断を下し。年々年老いて足を悪くし目を悪くし、弱りゆくティンクトゥラの傍らでサメラはずっと生き続けた。 母親は賢者であり魔女でないと信念を貫くためにもサメラは隣を歩き続けた。 しかし冬を目前にしてティンクトゥラが床に伏せがちになってきた。ゆっくり教わりながら家の事を手伝ってきていたサメラがご飯をつくるようになって、駆け足で冬がやってきたのだ。 「サメラ。」 「おかあさん。何がいるの?お部屋が寒い?お水はいる?」 「大丈夫よ。ちょっと寝るわね。」 「…?…うん。お休みおかあさん。お水汲みにいってくるね。」 「魔物が出やすくなるから気をつけなさいね?」 「はーい。じゃあ、行ってきます」 あの子がゆっくり暮らせるために、結界でも張り直しましょうかね。 よたりと立ち上がったティンクトゥラはゆっくりとしたあしどりで森の中に消えていった。 サメラが生きているティンクトゥラと会話をするのはこれが最後であった。 サメラが町に入れば、奇怪な視線を受けた。これはいつもの事だ。魔女が魔物を呼んだとか、言われのない事にただ歯を食いしばり耐えた。 町の中のひそひそ話が、サメラの耳にも届いた。最近魔物が現れたんだって。魔女が呼んだのよきっと。なんて言われてサメラはグッと怒りをこらえた。 手慣れた手つきでバケツから汲み替えていたら、悲鳴と知らせる叫び聞こえた。 魔物が出たぞー! それだけを聞いてサメラの脳裏に浮かんだのは母の存在であった。助けなきゃ。とサメラはバケツを捨てて駆け出した。 パタパタ街中を駆け抜けていくさなかに村の人間ではない人を見た。男女の旅人ように見えた。旅人がたまにこの村にやってくるのをサメラは知っていたので気にすることなく、その横を駆け抜けた。 「銀?」 「団長?。」 「いや、なんでもないさ。」 「ならいいんだけど。早くダムシアンに行かなきゃねー。新しい踊り子はそこにいるらしいんだから。」 旅人の風体の男女は人混みに紛れて消えていった 前 戻 次 ×
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