ルドルフ | ナノ


サメラにお使いとして本を頼んで持って来てもらった。サメラはベッドサイドに絵本を持って来て、頭を捻りながら読んでいたのを聞いていたが、ふとした時に物音が聞こえなくなってそちらを向けば、椅子の背に身を擡げて、安らかに息をする姿があった。本は膝の上で開かれて沈黙している。
そんなところで寝ていると風邪をひくぞ。と声をかけても反応がないので顔を見ると眉間に皺がないのを確認した。……昔、リディアが言っていた気がする。眉間に皺を大量に飼って眠っていた。街中での宿でリディアの魔法をかけてもらってようやく熟睡していたと。そう教えてもらった時は、驚きしかなかった気がする。野営では基本的にサメラを入れた男メンバーでやっていた。旅慣れていたことも、戦力の火力としても優秀だったが、少なくともサメラが女であるということを加味してもあの旅でかなりの無理をしていたと想える。気を張って眠らず誰よりも働いていた。そう考えると、こうして眠っているのが奇跡だと言えるのかもしれない。と考えるのと同時に、声をかけても起きないというのならば。安心して眠っていると同義だ。もしかして、これは珍しいシーンなのではないのかと到る。大体の野営で声をかければすぐに返事が帰ってくるのが、サメラだったのだが、こう声をかけても返事がないのが以外と言うべきなのか、珍しい光景だけれども、このまま寝ていたらサメラが風邪をひくかもしれない。一番働いているがゆえに、旅でも熱を出す怪我をする。黙っているというのが多かったと聞いているので、カインはあきらめて一度ベッドから降りてみると、足の様子もすっかりいいのだけれど、起きたときに動いてるのを見つかれば大目玉をくらうのがすぐに浮かぶので、さっさと行動しておこうと思う。ベッドから降りて、再度サメラを起こすが、そんな気配もない。ので、カインはあきらめてサメラを自分のベッドに置いて、奥に押し込む。いつも死んだように眠るとも聞いているが、落ちると後が煩そうなので今回の手段だ。抱えあげていれたのだが、思った以上に軽い。
カインと共に食べてるのをちゃんと見ているが、もしかして基本的に食べないほうなのかもしれないし、どうなんだろうか。
思い切ったことを聞いたことがないと思った。先の大戦でも基本的に干し肉とスープ、それからパンや日持ちのするもので基本的なものを行っていた。何日になるかもわからない旅なのである程度多い目には購入していただろうけれども、サメラが食事をしているところをあまり見た記憶がない。基本的に作っている間にある程度つまんだりしていると言っていたが、事実かは知らない。片割れのセシルはよく食べている方だとは思うのだけれども、あれはよく暗黒でエネルギーを使っていたので万年腹を空かせたと言っている記憶が強い。聖なる騎士になってからはどうかはあまり聞いた覚えはないが、そこまで燃費が変わることはないだろう。
まじまじと寝顔を見ていると、いつでも青の瞳が開きそうな気がして、ベッドに寝転びなおした。隣で息を殺す様に眠る姿はきっとバロンで受けている状況から逃げるからなのか、解らない。じっと顔を見つめ直すと、うっすらクマが出来てるのでもしかして働いてるのかとも考えたのだが、まぁこう手の込んだ料理ばかりしかしてないのでそんな時間も取れないかと思った。
隣からやすらかな音が聞こえて、そんな息遣いを聞いてるとうつらうつらしてきてカインもいつのまにか眠りの扉を開いてしまっていた。
夕方になって、サメラが目を覚まして驚いたのだが、寝ぼけたカインがサメラを枕にしてただただ懇々と寝ていた。サメラは腹が立ちながらも甘んじて受けて、いたが起きたら絶対にやりかえしてやろうと決めた。
そんなやり返しの機会が翌日にやってきた。

彼と私の生活。
4日目。


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