仕事が案外早くに終わり、サメラは家に帰った。ガウェインはセオドアと、コルトは白魔法の、そして片割れは野外で訓練と聞いていたので家には誰も居ないはずだったのに、微かな息遣いが聞こえた。 「…カイン?」 呼べども、返事がないので諦めてサメラは家の中に入った。 リビングに入れば、椅子に座り腕を組みうつらうつらとしてるカインがそこにいた。訓練と聞いていたが、なにかの都合で取りやめになったのだろう。が、こんな所で眠られて風邪でもひかれたら困る。 「カイン。おい。」 呼びかけても返事はない。ただ沈黙を保ち、安らかな眠りを貪っている。ただ静かに寝息をしている彼を眺めていたが、一向に起きる気配はない。 「カイン。こんな所で寝てたら風邪ひくぞ」 肩を叩こうと手を伸ばしたら、その手が捕まれて勢いよく膝の上に座るような形になってしまった。 「起きてたのか?」 「お前が入ってくる音で目を覚ました。」 「起きてたなら返事ぐらいしろ。そして離せ、熱い。」 「たまには、こんな日もいいだろう。」 「起きただろ。離せ」 自分の膝の上に座らせても、まだまだ背の低い彼女の瞼に唇を落とす。不満げな表情を浮かべながら、ムスッとした表情をつくる。 「離せ」 「最近、こうやって二人の時間がなかったからな。いいだろう、たまには」 「…すまん」 新たな家族を二人迎え、生活のリズムを無理やり変えさせたのはサメラであった。それを申し訳ないと詫びれば、構わないと、カインは答えサメラの髪を撫でた。銀色の髪が、さらさらとカインの指をすり抜けていく。 「くすぐったい」 「もう少しな」 「はいはい」 カインの大きな手が、サメラの頬を撫でてサメラは擽ったそうに身を捩らせ、顔を俯かせる。 「サメラ、こっち向け」 「…嫌だ。」 「向かすぞ。」 すこし語彙を強めに発言すると、サメラは、目にも留まらぬ速さでカインに抱きついて、完全に顔を見せなくなってしまった。が、かすかに銀の髪の間から、赤くなった耳が見えて、 「…絶対に嫌だ。」 「はいはい、もう少しな。」 仕方ない。という口振りのカインは、柔らかな笑みを浮かべサメラの腰に手を回し、空いた片手で、また銀を浚うのであった。 20140602、(捏造)カイン聖誕祭。 耳まで赤い君が好き。 (なぁ、姉ちゃん。俺達いつ家に入れるんだよ)(…仕方ないね、一旦セオドア君のところでも、行こっか。) 前 戻 次 ×
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