ルドルフ | ナノ


フロアを上に上に向かうほどに、プロムの鼻は異なるものを感じ取っていた。なにかいる?と思いながらたどり着いたのは短い渡り廊下を渡った先に。そこに、サメラとやり合った空色の髪をした女がそこにいた。

「どこからか鼠が迷い混んだとは思っていたが……ずいぶんと大きな鼠だな。」
「てめぇのなんの、目的でこの塔を動かしてやがる?」

女が鼻で笑って、劣等種風情に教えることなんてない。と言えば、エッジは劣等種ねぇ。と
顎に手を置いて、一瞬考えてから「その劣等種ってやつはなぁ。成長するもんだぜ?」と、口角をあげて、笑ったのがプロムにはわかった。どことなく、この人はサメラに似た人だとも思えた。

「ならば、その芽は早めに摘もうではないか。」

そんな女の声のあとに、熱風が舞い上がった。ダムシアン砂漠の比ではない、肺をすべてを焼き付くさんとする灼熱の炎の熱気だった。フード被ってろ。と背中のプロムに指示を出したエッジは、一旦引くぞ。と言って、踵を返すように、稲妻が走ったように一瞬で女と距離を開いて、撤退できた。角を曲がった先に、どんな術を使ったのか解らないが、先ほど出会った空色の髪の女がそこにいた。

「テレポ?」
「灰になるか、血を流し絶命するか、二つに一つ。」

女の声に反応するように灼熱の主のイフリートが喉を立てて吠える。その音はひどく苦しそうにも聞こえて、エッジのつかむ力が強くなった。それを、恐怖と捉えたのか、小さく息止めとけよ。と声を溢してエッジが懐から小さな玉を取り出して地面に叩きつける。叩きつけられた衝撃で、小さな玉から煙が勢いよく舞い上がって、辺りを白に染める。その煙を抜けるように、女の横を走り抜けて、先ほど女が立っていた部屋に肩からぶつかるようにエッジが先陣を切り、ドアを壊すような勢いで開ける。そこは、豪華な台座が8つおかれた音の無い部屋であった。六人は部屋の入り口で足を止めると、影がゆらりと煙たつように女がイフリートを連れてそこに、立っていた。

「逃げ場はないぞ。」
「さ、それはどうかな?」

まるでいたずらをするような子どものような明るい口調のエッジが、プロムに言うように舌噛むなよ。と溢して、後ろに一歩下がる。プロムはなにだ?と眉根を寄せた刹那、世界の色が一気に変わって黒くなって、自分の耳にバサバサとローブの当たる音を聴く。そしてそこで、自分が高々度から落下しているとこに気づくと、一瞬にして世界は色を取り戻し、エッジの背に強かに鼻を打つ。

「うっ」
「わりいな。」
「親方様あの穴は……一体?」
「あるものは、昔からかわんねぇんだよ。」

穴から炎と共に女が降りてきて、急ぐぞ。と臣下に声をかけて走り出す。プロムは小さく魔物の音を放ち、風を起こし、灼熱の炎を交わしながら、水を呼び出し風を産み、彼らの背中を押すような追い風を産み出して、荒れ狂う炎を交わす。背負われているだけでない、戦力として戦わねばいつ戦うのだと己を震わせる。

「乗ってください、津波!!」

産み出した水の流れが後ろを止めて、そのまま勢いよく通路を埋めて水の流れの排出されるような勢いでドアを壊して、別の通路に落とされ、細い桟橋の上に六人ともがおとされた。水の流れによって、エッジに回していた腕が離れたが、屈強な忍の一人にローブを捕まれて、プロムも無事に放り出されることなく桟橋の上にたつ。

「おめえも、ルドルフみたいだな。」
「背負われてるだけが、僕じゃないんで。」

魔法で産み出した水だったので、魔法をやめると水は瞬く間に霧散して、消える。回りを見回せど、逃げる場所などなく、遠くでイフリートの鳴き声もして、壊れた扉から女がやってきた女が「これで終わりか?」と笑っている。エッジはプロムを背負わず、民を守るかのように背を向けて、さすがにね。と声をあげ、肩をすくめた。
この男はここで終わりだと言ったのだ。プロムは何てことだと、声をあげかけたが。隣の忍によって、口を押さえられて、親方様の考えだと言う。いざとなれば、我々が君を守るとも言う。その自信はどこから来るのだろうかとも思ったが、プロムはおとなしくその背を見つめた。

「な、冥土の土産の一つとしてさ聞いてもいいか?」

なぜ、お前はクリスタルを?その声は、広い部屋に響いた。反応はない、回りの機械の音がカラカラと鳴っているが、女は笑みを浮かべたままだった。そうかよ、答えたくねえのか。
これでよ、確信が持てたぜ。あんがとな。と答えて、エッジは桟橋の向こうに、駆ける。ついてくんなよ。と行きすがらに、声をおいて、そして、エッジは桟橋の向こうに落ちていった。大きな屈強な忍がプロムを掴んでエッジに次ぐ。彼らは、びゅうびゅうと音を切りながら、闇を切り裂くように落ちていく。一瞬二瞬の落下を感じたあとに、しっかりと重力を感じた。

「プロム、無事か?」

にっと笑ったエッジがそこに立っていた。


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