ぼくはスカウト!薔薇の庭園で。 





ぼくがガーデンスペースで一息入れていると、遠くから見知った顔が見えました。楽曲の録音などで見知っている子たちです。『Knights』の鳴上くん、『Trickstar』の氷鷹くん、朔間さんのところの乙狩くん。珍しい組合せですが、全員知らないわけでもないですし、四人掛けの席をぼく一人で座っていたこともあったので緩く手をふって空いてますよ。とアピールすれば、鳴上くんが反応してぼくに手を振り替えしてきました。乙狩くんだけが注文を行うようで二人から離れて券売機のほうに行ってました。

「こんにちわ、晦先輩。」
「はい、こんにちわ。珍しい組合せですよね。きみたちは。」
「鳴上の気分転換だ。」
「そうですか。なら、ぼくはそろそろお暇しましょうかね。同じ学年同士話すこともあるでしょうから」
「いいえ、晦先輩もいていただけたら嬉しいわ。」
「そうですか、お言葉に甘えましょうかね。」

先ほどカフェインを大量に接種したので、しばらく眠気もこないでしょうし、食事中の話ぐらいならいくらでも付き合いましょう。『Knights』は大変な時期のようですからね。

「晦先輩は食べ終わったのか?」
「録音の合間の休憩ですよ。いろいろな楽器で一通り録音はしたので。」

エレクトーンならば一発なんですけれども、あれをさわるのはひどく怖いのですよ。なおも時間がかかって費用がかさんで仕方ないですね。呆れてため息を吐き出せば、そういえば晦先輩に、【DDD】の楽曲を用意してもらったな。あのときの楽曲代金はどうしたらいい?そう氷鷹くんはぼくに問いかけましたが、そういう代金は朔間さんからいただいているので、気にしなくていいんですけど、真面目な子ですよねぇ。何度か伝えたりしてるんですけど。折れないところは、さすが日々樹くんの後輩になるだけありますよね。

「今度、コーヒーでも奢ってくださいな。それだけでじゅうぶんですよ。」
「わかった。今度持っていこう。」
「そうしてください。ところできみたちはどういう経緯でそういう組み合わせになられたんですか?」

『Knights』と『Trickstar』は相性よろしくないと記憶しているんですけれども。そう伝えたら、まぁ、ユニットとしてはね。と…瀬名くんが悪いみたいな風に捉えちゃいそうな流れですけど、それでいいんですかね。ふむ、と考えてると氷鷹くんが鳴上くんに話しかけました。現『Trickstar』のリーダーと『Knights』のリーダー代行。ぼくはぺーぺーの鳥ですからね。のんきにさえずってますよ。今日も今日とて。
二人はリーダーについて話し込んでいるので、ぼくはただただ相槌を打つ程度に押さえておきます。口は災いの元、出る杭はうたれるようなものですから。やりたくないですよ、リーダーなんて。ぼくも一時はリーダーなんてやりましたけど、あの頃はソロですから。まぁ、ぼくはそうリーダーらしいことやってないんですよね。まぁそうソロで動いてたからこそ、人形遣いと出会ったわけなんですけれども。

「出会えた奇跡は珍しいものですよね。」
「…?どういうことだ。晦先輩」
「あぁ、いえなんでもないんです。朔間さんの子も戻ってきたようですし、ぼくもここで失礼しますかね。」

若い子は若い子でやっていてください。それだけ言ってぼくは彼らの席から離れる。後ろでワイワイしてるのを受けながら、ぼくらもあぁ言う時期があったんでしょうかね。そう思った瞬間でもあった。



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