俺とスカウト!ビブリオ。 5e 





全員を本棚に送って、つむぎに適当な本を一つ持って来てもらってぼんやりと思考を走らせながら今度のイベント企画のどうしようとか校内バイトの振付の原案だったり転校生ちゃんに頼まれてたものを処理しつつ、にぎやかな音に耳を傾ける。手伝ってもそんなに力になれないので、俺は端っこの方で一人大人しく本を開きつつ雑務を済ませていく。

「ごふっ!」

人の音として不思議な音が聞こえてそっちに視線を向ける。同時に鈍い音が地面に落ちた。どうやら蓮巳がもろに顔面で受け取ったらしい、天祥院に見せたら爆笑ものだったかもしれない、とかどうでもいいことを考えながらまた視線を落とす。今度振付どうすっかねー。と思いつつ、また作業に取り掛かる。仮踊りとしての原案だからそんなに難しく考えなくてもいいんだけれど、いやいや、アイリッシュ入ってる。と思って振りを少し戻す。しばらく作業を続けているとポケットの中で携帯が震えた。止まる気配がないので見ると転校生ちゃんからの着信だった。

「蓮巳、杖返せ。電話かかってきたから外に出てくる」
「暴れるなよ。」

一言多いっての、蓮巳から杖を奪い返して外に出る。もしもし、と返事しつつ、杖をついて近くの階段に向かう。そのまま階段に座り込み、ああでもないこうでもないと話をしながら企画の練り合わせと企画書をどうするとかの相談を始める。

「いやーさっきいろいろあったんだけどさ。」
「どこか楽しそうですね」
「まぁ、ちょっと昔を思い出してね」
「悩みすぎたら毒ですよ」
「きみは強いねー」

俺がずっと笑ってるのはたぶん空元気だろうと思うよ。つむぎくんにあーんだけいっといてこんなんだからな。もうほんと情けねーの。で、さっきの話なんだっけ?と話の路線を変える。

「今度の企画、ゆらぎ先輩に一つ踊ってほしいんです。」
「まじ?」
「夏目くんが、このタイプならゆらぎ先輩を出したほうがいいって言ってくれたんですよね」
「ほんと?転校生ちゃんの企画を?」
「まーた転校生って呼んで…!」

あ、わり。と謝って、ははっと笑う。その話をまた今度詳しく聞いてもいいか?と告げるともちろん。と返事が返ってくるので。俺は嬉しくなってニヤニヤが止まらなくなってきた。転校生は目的地に着いたのでいったん切りますね。と告げて通話を切る。嬉しくなって、俺は小走りで杖もつかずに走って図書室まで戻った。ガン!と古いドアを全力で叩きつけるように開くとつむぎくんを視界に入れた瞬間に昔のメンバーがダブって見えた。昔もこんなことあったな、って考える前に、言葉が出なくなった。どこか懐かしくて、嬉しくて仕方なくて、あの時は初ライブだったような気がする。S2とかに通った!っていう話だったような気もするけど。踊れるんだ、あの光輝く場所に俺一人で出れる舞台があるって。

「え。あ。ゆらぎくん、どうしたんです?泣いて何かあったんですか?。」
「え…あぁ…俺、泣いてる?じゃあうれし泣きだよ!いいからつむぎくん、聞いてほしいんだ!」

慌てて靴を脱いで部屋に入ると杖が入り口に当たって俺の足がもつれて転ぶ。蓮巳がおい、と言ったがもう嬉しくて仕方ないんだ。痛いのが夢じゃないぞって教えてくれるのがうれしいんだ。今なら何でも喜んで歓迎できそうな気がする。

「つむぎ。俺、今度踊れるってさっき転校生から連絡が来てさ!。」

多分今俺ぐちゃぐちゃの顔してるけど嬉しくて仕方ないんだ。俺の話を聞いてもらってもいいかい?と言うと、見慣れたつむぎが口を開く。
「ほら、言ったじゃないですか。止まない雨はないってね。とりあえずゆらぎくん、鼻血でてるのでそこから対処しましょう。」と俺に手を差し伸べてくれた。俺はその手を借りて立ち上がって、紫之におめでとうございます!とか言われた。嬉しくて仕方なくて踊りのあんだけが雨のように降ってくる。今の雨でも俺走って帰れそうな気がしてきた。とかいうと、蓮巳は強制送還するぞ。と怒られたので、とりあえず俺は鼻血の処理から始めることにしたし、転校生がそこにいて、朔間からつむぎくんの眼鏡を探してくれたらしい。さっき言っていた目的地はどうやらここだったようだ。…とりあえず俺踊ってからあの朔間ぶっ潰す計画を立てなければいけないな。とかつぶやくとお前まだ考えてたのか。と蓮巳がちょっと引いた。ほっとけ。セコムで何が悪い。いいよここにいる間ぐらい弟のセコムだってラッキーアイテムだってなんだって命かけてしてやるっての。


「ほら、ゆらぎくん笑ってくださいよ。」
「…俺の笑顔は高いってんだろ」



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