俺と不羈!女神のトラブルライブ 4 





『Ra*bits』の部メインの練習日。
比較的跳ねたり足をあげたりが多い楽曲で、膝を心配したが行けそう。右足頑張れ。と思いながら踊ると仁兎に笑顔が足りてないと言われる。指摘を修正して俺は満面の笑みを振りかざす。
身長180弱の男のかわいいポーズが見たいか!ゴルァ!なスタンスで『Ra*bits』指定の躍りとフォーメーションを確認して踊っていると、膝が痛み出した。そのまま無理して踊っているとびりびりとした痺れが出てきて、足が強ばる。前列と後列の入れ替えフォーメーションで俺は天満に激突した。鼻っ柱がが痛い。ヒリヒリする。

「わぁ!大丈夫か?ゆらぎちん。」
「悪い天満、怪我はないか?」
「大丈夫なんだぜ!」

いてて。と溢しながら立ち上がれば、足か?と言われて、こむら返り。と適当に誤魔化す。あとで佐賀美ちゃんとこ行ってくるわ。といいつつ脚の筋を伸ばしておく。ぐぐぐと伸ばしていくと、気持ちよくてあー酷使してると自分で思いつつ、へらりと過ごす。

「青ちゃん先輩のおにーちゃん大丈夫?」
「んー、大丈夫いけるー」

屈伸をして筋肉を伸ばしながら、ごめん、止めたな。と謝れば、だいじょうぶですよ!と一年の声。僕らもよく失敗しますから、と紫之がはにかみながら笑う。紫之に体幹整えるといいぞ。と声かけしていると、もう一回やるぞ、なんて仁兎が声を出すから、ついついおう!と返事をすると、以外と体育会系だな、と仁兎がぼやいた。うちってか『Diana』はそんなんだったからついね。
もうそんな光景もないかもしれない。ってかないんだけどさ。いやぁ、たのしかったよなぁと思いつつ、一年以上ぶりのこんな些細なやり取りが嬉しくて頬がちょっと緩む。年取ったなぁ、涙腺弱くなるなぁ。懐古厨とかじゃないんだけどなぁ。と思いつつとりあえず水分補給してると宙が疑問符をつけながら首を傾げている。

「せんぱいのせんぱい、いい笑顔だな〜、でもちょっと寂しいが混ざった色にも見えるのな〜?」
「ソラ、それは黙っておいた方がいいヨ。ゆらぎにいさんはそう言うのうるさいかラ」
「おいこら、夏目。」
「あれ、もしかして図星かナ?」

ぐぬぬ。この口の立つ『五奇人』の末子め。自由気ままのふりして意外とばれてるんじゃねえか。ってひやひやするわ。適当にそんなことねー!とカラカラしてると頭から音流すぞー!と言われて、俺たちは開始のフォーメーションに立って通し始める。
『Ra*bits』メインのも、『Switch』メインのも、『Diana』のも、どこもメドレー方式で動くので、以外と覚えやすい。いや、『Diana』の振りはおかしいだけなんだけどな。民族楽曲多いから男役振り付け女役振り付けしてるの。まぁ、左右の足とか違うぐらいにとどめてるのは、俺の優しさです。元来というかオリジナルのだともと激しく回ったりしてたの。バーンザフロア的なことやったライブとか楽しかったなー。とか振り返ってると、あんずが練習室に飛び込んできた。走ってきたばかりなのか

「ゆらぎ先輩、大変です。」
「おっけ、わかったそっちいくわ。」
「青葉先輩杖どうぞ。」
「ありがと、真白。」

ちょっとすぐ帰ってくるー練習続けてー。一旦抜ける旨を伝えて仁兎に日を改めて練習を見てもらう約束を交わしてと俺はあんずと一緒に部屋を出る、ドアを閉めてから詳細を聞く。向こうの事務所から届いたばかり資料が全く違うと言われた。俺の第二バトルの始まりかよ。練習着から、制服に着替えてる間にタクシーで乗り込んで、思考を巡らせながらどうやって喧嘩してやろうかと思ってるとあんずが心配そうに俺を見てた。平気平気、タクシー呼んでもらっていい?がっつり喧嘩してくる。と宣言してるとおれのスマホが鳴った、携帯を確認するとあいつらの事務所。心の中で舌打ちして出るとこの間の担当者。
顔は笑っているが、俺の声は全く笑ってない。どうも違う書類を送ったようで、と言われるが企画書のタイトルと場所は俺たちのライブのタイトルだ。そのまま相手の指示通りに廃棄処分改めて送ると言われたが、もう時間があまりないので取りに行く旨を伝えれば、かなりこまった返事をもらった。いや、俺も困ってるんですけどね。とりあえずもうタクシーに乗ったので、あとこれぐらいでつきますから、資料をお願いします。と無理矢理切る。

「あんず、ちょっと出掛けてくるけど、あいつらよろしく。すぐ帰ってくる。」

それだけ伝えると、俺はダッシュできないけど。急ぎ足であいつらの事務所に突撃をかましてやった。あとで帰ったら踊らなければ、ついでに現場の下見にも行こう。建設会社の作業員とコネクションは出来たのだから、たぶんいける。いくしかない、っていうか許可はもらってる。突っ込んでもオッケーなんだけど、とりあえず新しい資料を回収する。俺たちの纏めた内容があってることを確認して、行けてたらそのまま施設を見て自主練習をして帰る。とかスケジュールたててたのに、あのぼんくら事務所は、180度ぐらい中身が違うものを作ってたので、俺の赤ペン先生が始まる。会場も場所も全部確認してほぼほぼ俺作の企画書を担当に作り替えさせる。必要なものを片っ端から事務所に変わって俺が楽曲申請からなにからなにまで手続きを行うはめになった。
完成品はリアルタイムあんずに写真で送信。生徒会の申請よろしく、紙は明日わたす。と連絡を入れれば親指立てたスタンプ一つ。君も忙しいのにね。いいけど。無理すんなよ。と思いつつ担当者を急かす。がこの担当者エクセルもパワポもうまいこと使いこなせてないの。まじ社会人どうなの。って感じだけど。事務仕事とかも好きだけど、これ、担当者おまえの仕事のやつな。
作業中におそらく事務所の人に怪訝な顔されたり、ひそひそと良くない声を聞いたり、あぁ、『Diana』の。と聞こえたので、元メンバーのあいつら絶対ゆるしまじ。ついでに噂を聞いたのか、あいつら真面目にレッスンしてるのか聞いてみたいが、俺が口出すことでもない。とりあえず担当にちらって聞いてみたけど営業に苦労してるみたいで、ひっそりざまあみろって思うと同時になんとも言えない気分になった。あんずが居なくて正解だったね。あいつにも『Diana』の話なんてきかせてやれねえもん。いつか、俺が死ぬだなんて解っててあいつにプロデュースさせらんねえよな。いつかの死をわかってるだなんてあいつに言えねえよ。まぁ、そうならないようにするけどさ。
そんなこんなを経て俺の赤ペンが唸りを止むのは午後11時。現場は見に行けないし、練習途中だし、さんざんな一日。タクシーでとりあえず家に帰れば、つむぎくんに慰められつつ飯を与えられる。飯を食いながら俺の居なかった報告を聞く。とりあえず明日は土曜日、授業がないので、『Diana』と四部目のレッスンだけど、俺は嫌な予感しかしなかった。

「つむぎくん……おれ死にそう。」
「じゃこおかかチーズの準備はいつでも出来てますよー」
「よし、明日は学校泊まり込んでいい?」
「また無理しないでくださいよ。ゆらぎくん」

日曜は家にいるよ。ちょっとげっそりしてるけど、トランスかけたくなってくる。とか思う俺は末期だろう。



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