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個性把握テストォ!?
誰かのこれが煩く響く。おう、入学式もガイダンスも全部なし。私にとってめちゃくちゃうれしいが、隣の百はどうも不満気のような顔をしている。大丈夫大丈夫、教室の配置ならまだまかして。とこっそり思うが、面倒なので黙っておこう。
ソフトボール投げ立ち幅跳び50m走持久走握力反復横跳び上体起こし長座体前屈。どれもこれも中学からやってる個性禁止の体力テスト。相澤の並べていく競技にひっそり眉をひそめる。面倒。まじかんべんしてほしい。なんやかんや御託を並べてる相澤が薄い色した髪の少年にボールを渡す。人相悪いぞ少年、と思いながら少年がボールを投げる様子をぼんやり見つめる。投げる際に少年は個性を使ったらしく、爆発音を鳴らしながらなんか暴言を吐き出しながらボールを投げる。ボールは破損しないのか?と思って眺めていたが、壊れることはなかったらしい。近くの子が、すごいよね!こんなの!と誰かが言う。
個性ありの体力テストらしい。ぼんやりしてたから相澤の声も全く聴いてない。

「トータル成績最下位のものは見込み無しと判断し、除籍処分としよう。むろん、お前もだ沖方」
「ひぃいい!?」

なんで今ここで私の名前を出す。相澤ァ!?隣の百からも近くの女の子からもどうしたの?と言わんばかりの目でこっちを見るんじゃない。私はひっそりお金をもらって働きたかっただけだ。悪いな。ヒーロー科に入ったのも、お母さんが「佳英ちゃん、ヒーロー科に合格したらお小遣いの額あげちゃうよー」っていうしょうもない理由なんだもん。だって、お金いるじゃん。老後の蓄えしたいじゃん。え?普通じゃない?気のせい気のせい。超人社会だもん、金は必須だよ。と思っていると、芦戸ちゃんがやってきた。

「私の個性で、これ…やばいかも。」
「佳英さん、だいじょーぶ?」
「あーうん面倒だなーっt、モゴッ!!!」
「沖方、早く準備をしろ。お前が最後だ。」

捕縛用で掴むな。睨むと、早くやれと、顎で指される。ヘイヘイ。と返事をしながら、第一種目の50メートル走のスタートラインに立つ。…個性ありだよな。なにに使おうか考えながらぼんやりと、あぁそうだ。ボール投げでもしておくか。と思う。軽いし楽だし。と思いながら50メートルを走る。走ってから、コースに対して”個性”を使えばよかったんじゃないか?と気づいて一人ショックを受ける。もう、疲れるから、ボール投げしか個性を使わないようにしよう。そうだ。楽だよ。ボールだもん。と決めて、そこそこ真面目にやって、ボール投げは視界に見える限りの遠くの樹にボールを置いて、クラス2位ぐらいの結果を得て、ほかの結果お察し。で、順位は下から数えたほうが早かったとだけ。
一人流血沙汰の”個性”の子がいたけれど、とりあえず。相澤の合理的虚偽とかいうから、ほんとあいつまじ。また埋めてやる。と一人つぶやく。
ほぼ個性を使わずに済んだ。らくちんらくちん。
っていうか、最近の若い子ってすごいよね。っておもう今日この頃。
終わった後に、おまえ。あとで職員室。と相澤に呼ばれる以外は。

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