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職員室までスーツの提案書なんだけれど、これを提出しにいく最中に階段を下りてくるまったく知らない人を見た。虚弱そうでひょろい大人だった。ヒーローでもなさそうなんだけれど、事務とかの人なのかなと思いつつ失礼ながら上から下まで一通り見ていると、一瞬その人が足を滑らす。あ危ない。と思って、直感的に手を出してしまった。“個性”を使って段差のないところに置きなおす。

「あの、大丈夫ですか?すいません、危なそうだったんで“個性”を使って安全な所に移動をさせました。驚かせたならごめんなさい。」
「あ、大丈夫だよ、沖方少女…さん?。」

なんで、この人、私の名前を知ってるのだ?一瞬眉を潜めたのが見られたのか、その人は君も有名だからね。と返答された。あぁ、そうか、体育祭で写ってたっけと思い出して、納得する。窪んで影になった瞳から見える表情は元気そうだったので、ひと安心。

「ご無事で、何よりです。」
「ごめんね、ありがとう」

君はいいヒーローになれるよ。とその人が言う。
なんか、最近こんなことあったな。と思い出すとあぁ。職場体験の前にオールマイトに使ったなぁ。と思い出す。どこか、オールマイトに似た影を持つような印象があるのは、髪の色が似てるからだろうか。ご無事でよかったです。と適度な挨拶で切り上げて、私は相澤に書類を出さなければならないのを思い出して、職員室まで急ぐ。その道中に、たしか、オールマイトとおんなじ位の飛び方してたな。と一人で考えながらぽてぽて歩く。相澤に遅いと叱られ、説明したら「雄英にそんな人はいない」なんて追加説教を喰らう。私は誰を助けたんだ?全くもって解せぬ。解せぬ。


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