033

髪の整えて、戻ると爆豪はそこにいなかった。先にトレーニングに行ってもらってる。そうですか。いや、別に爆豪に興味はないんだけれど。

「正直、君の性格が嫌いだ。」
「けっこう正直に言いますね。」

雄英体育祭の時のルールをぎりぎり反則しかけてる走法は、どうもベストジーニストには響かなかったらしい。地面を掘るといっても、穴をあけても地面は地面だし簡易な洞窟みたいなことになったけれど、実質その洞窟の天井はガラクタなので地上として扱われてるだとか、第二の関門のルートの通り方はどうだ。とか、いろいろ言われたが、結局このヒーローベストジーニストの言うのは、矯正するのがヒーローだと言いたいのだろう。

「嫌いと言われても、”個性”を加味していいルートがそこだから。というだけでした。」
「爆豪君にも言ったが、君たちはひどく表裏一体の世界の反対側に立とうとしてる。それを矯正するのが私のヒーローとしての動きだ。何を持って人をヒーローにさせるのか、を教えるために君を指名した。」

…おい、相澤に言え。とか心の底で思いつつ、ベストジーニストに言いたいことを言わせておいて、流しきく。大体さっき聞いた話ばかりだったし。つまり、ベストジーニストの事務所の補助と自分のトレーニングしろってことだな。んで、一日一回爆豪と手合せしろってことだ。そしてこれが五分前。そして今。

「くそ、死ね!」
「いや、死なないってば!」

突き出された拳を横に反れてその手を掴み、投げ飛ばす。受け身を取らず壁を蹴り推進力を得てまた飛び込んでくる。うっせぇと吐き出しながら手のひらから爆発させる準備をしている。痛そう!とか思うので、寸でのところで出かわして反撃のけりを入れる。地面に叩き落とすように下向きに足の甲でひっかけながらのやり方をして、距離を開ける。

「くっそがぁ!」
「一撃あててみなっての!」

軽い拳だったので、爆豪は避けることもせずその手が腹に当たる。そして軽い衝撃が来て、壁にぶちあたり、止まる。ぐっと一瞬息が詰まって、呼吸が一瞬止まる。ずるずると床に座り込むと、大丈夫かと仲裁役であるベストジーニストが寄ってきた。

「怪我はないか」
「爆豪が手加減したので問題ないです。」

ベストジーニストの手を借りて立ち上がり、首をぽきぽき鳴らして、じゃあトレーニングもこれで終わり、いったん休憩して事務作業をするから着替えてくるといいよ。30分後に前の部屋に二人とも集合で。淡々と指示を出してベストジーニストはさっさと部屋から出て行った。

「チビ、お前どうしてここを選んだ」
「崇高な理由なんてないよ。爆豪、あんたもでしょ?」

だって、サイコロだもん。口が裂けたって言えるか、雄英の受験と同じ理屈だからなぁ。そして、No4のヒーロー以上に来ていたはずの爆豪だ。どうしてここを選んだのかも想像するならば戦闘が多いとかなのかもしれない。知らないけれど。ぼんやり頬を掻きながら、爆豪とこうして話をするのも初めてだなぁ。戦闘訓練のときに能力を解説したぐらいで。こいつと一週間いるのかー…。なんとなく、お互いがお互い似たようなこと思ってるんだろうなぁ。なんて思いつつ、着替えて休んどこ。って決めて…ジーンズじゃないよね。じゃないとダメとか言わないだろ?一抹の不安を覚えながら休憩しようと心に決める。


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