「つがる、」
白い電子空間。そこには、胡座をかいて楽譜を読みながら口ずさむ和服の男と、白色のコートを身に纏う男がいた。
新しい楽譜をもらった津軽は、ひたすらその歌を練習している。しかも、いつも以上に何回も、何回も何回も何回も、飽きることなく。
多分、半日は費やしてる。
その間、全く構ってくれてない。
「つがる、つがるつがる」
「〜♪〜♪♪、〜♪、♪♪〜」
「………」
「♪〜〜♪♪、〜♪〜〜♪♪〜」
「……………つがる、」
「〜、♪♪〜、〜♪…♪………ああ、くそっ!」
「!、つがる!」
歌が止んだ途端、サイケは胡座をかく津軽に、真正面から勢いよく抱きついた。それに伴い、津軽は少し苦しそうに咳込むも、サイケの知ったことではない。
やっと、これで構ってもらえる。
「サイ、ケ…?」
「さみしかった!……さみしかったよぅ、つがるぅ!」
「…ごめん、な?」
抱きついてきたサイケの頭を、津軽は優しく撫でてやった。
「どうしても、歌……完成させたくて…」
「……さっきの、うたを?」
「ああ……サイケに、一番初めに聞いてほしかったから………」
「だから、ずっとれんしゅうしてたの?」
「うん…………でも、まだ上手く歌えてない……」
顔を俯かせて、津軽は少し寂しそうな顔をした。それとは逆に、サイケは目を輝かせて笑っていた。
マスターである臨也よりも、僕に先に聞いてほしい……………それって!
「うれしい!」
「え?」
「つがるが、ぼくのために………ぼく、あいされてるんだね!」
「あっ、あい…愛って……!」
あたふたと、顔を真っ赤にして慌てる津軽を、ニコニコと見つめる。
ムギュッ、抱きしめて
ほっぺにお礼のキス
そのあと愛してるの
唇にキス
「ん、っっ…!」
「あははっ!つがる、かおまっかだよ!」
「それは、サイケの「あいしてるよ、つがる!」っ、……俺も、愛してる……」
恥ずかしそうに、でも柔らかく微笑んで、津軽はサイケに口づけた。
彩るのは心ではなく、(僕ら自身!)
(つがるぅ!さっきのうた、うたって?)
(まだ、歌えないところもあるぞ?)
(いいよ。つがるがうたってくれるなら!)