洗濯させて

「切国! そろそろこの布洗わせろと言っておるだろ!」
「……っ、だから、俺にはこれが丁度いいと何度言えば……!」
薄汚れた襤褸をぐいぐいと引く仮面の男と、それを剥がされないように布を握り締め自分に巻き付けるようにしている金髪の男。
朝から大の男が何をしているのかと訊かれそうな光景だが、ここではほぼ毎日、こんな攻防が繰り広げられている。
「あんまり不衛生だと病気になるだろう」
「刀が病気にかかるわけがない」
……ああ言えばこう言う。
審神者の相月は、梃子でも布を離そうとしない山姥切国広に溜め息をついて、丁度良く部屋の近くを通りかかった燭台切光忠と薬研藤四郎に声をかけた。
「燭台切、薬研、ちょっと手伝ってはくれんか」
「なっ、三対一は卑怯だ主!」
悲鳴を上げる彼の様子を見た二人は状況を察すると、どこか哀れみを含んだ表情を浮かべて審神者の近くに寄り、
「あまり苛めてやるなよ大将」
「彼だって困っているし」
と言いつつ山姥切の動きを封じるべく彼に腕を伸ばした。
「あんたら、言葉と行動が一致してないじゃないか!」
「大将に逆らえるわけないだろー?」
「丁度いい機会だよ、一度綺麗にしてみたらどうだい?」
「そんなわけだ切国、布を取らせろ」
審神者の楽しそうな声色に、仮面の下の顔にはいい笑顔が浮かんでいるのだろうと感じた山姥切は、せめてもの抵抗にと両手に更に力を込めた。
すぐに剥がされてしまったのは言うまでもないが。



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