共闘、もとい教育

夕闇に包まれたプラント地区。
ギィィンッと、金属同士が擦れる酷い音がする。
辺りには硝煙の臭いが漂い、そこかしこから怒号が響いていた。
そんななか、敵PTの咎人とやりあっている忠は、振り下ろされたミマースを思わずムラサメで受けた。
そしてすぐに、避ければよかったと舌打ちをこぼす。
(重い……)
両腕が軋んでいるのがわかる。
動きが遅い分、一撃の威力が凄まじい。
助けを求めようにも、アクセサリは他の敵で手一杯のようだ。
相手の女咎人はニヤニヤと口許を緩めている。
どう受け流そうか、と表情を歪めた忠の後ろから、耳に痛いモーター音が響いた。
「力抜け忠ッ!」
「え」
咄嗟に言葉通りの行動をとると、肩に衝撃が来たと思う間もなく、ッパァン!とミマースが弾かれ、敵がよろける。
EZ-フォアフスF II、平たく言ってしまえば強化改良したチェーンソーを振るうミズホの背中が視界に入った。
どうやら忠の肩を使って跳躍したようだ。
バサリ、長い銀髪が揺れ、直後に赤い飛沫が上がった。
「……流石ね」
「これくらい出来なきゃ第八にはいられないからさ。あんたも頑張んなよ、いつまでも第二やら第三やらにいたら埒があかない」
呆れたような口調で忠を見据えたミズホは、ノイズと共にピアス型通信機から流れてきたアクセサリの声に舌打ちをした。
確かあれはカルロスのつけていたものと同じ型で、第八情報階級にあがれば装着を許されるものだとぼんやり思う。
『敵の増援が接近中。ミズホ、注意してください』
「あいよ。ほら、あっちから来るからついてきな」
あぁ、またこれだと、忠の胸に苦いものが広がった。
ミズホの口調はいつも上からなのだ、本人が自覚しているのかはわからないが。
「…………なんというか、その、命令口調やめてくれないかしら」
毎回毎回、不愉快なの。
そう言うと、ミズホはキョトリと大きな二色の目を見開いてから、
「might is right、力は正義なりって言った方がいい? 覚えときな」
と、チェーンソーを忠の首に突き付けた。
突然の行動と鋭い金属の塊に、無意識に、ひゅっと喉が鳴る。
「こんなこと言っちゃ悪いけど、あんた弱いでしょ? 資源として認められるには強くなきゃいけないの。今のあんたは低級資源で、例えばここであたしに殺されたって、なーんも文句言えないの」
まぁ、もちろんPTからはお咎めがくるだろうけどさ。
ここまで言った彼女は一息ついて、にっこりと笑った。
「だからさ、強くなるまであたしが面倒みるから。早く二級市民になってあたしに命令できるようになんなよ。ほら、行くよ。大事なアクセサリがまた大破しちゃう」
「……ええ」
慣れた手つきで荊を射出し敵を薙ぎ払う彼女の後ろ姿に、
「言われなくたって、すぐに追い付いてやるわ。待ってなさい、ミズホ」
と宣戦布告をして。
ムラサメを握り直し、援護に走った。





オリジナル咎人の名前は出さないと言っていましたが出ました。私のところの子がミズホ、友人のところの子が忠です





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