おおふり | ナノ


「あれ…」
開いてたはずの電子辞書の画面はいつの間にか何も映っていなかった。
携帯のディスプレイも真っ暗になって。
オートで電源がオフになる機能。
凄く便利、エコ、私にはうってつけ。
でも少し寂しい。





[マニュアルスイッチ]





元々サバサバ系の行動か素早い方ではなかった。
でも良く決断力がある、サバサバしている、そう言われる。
それはマネージャーという仕事についたから。
そして本当は優柔不断でのろのろした私が人を待たせるのは嫌だから。
そこから来ている。

電子辞書も携帯も私の事をずっと待っていてはくれない。
時間が経ったらすぐスイッチが切れちゃう。
それと一緒、もたもたしてたら皆どこかに行っちゃう。
私なんか置いて行っちゃう。





「あれ、西浦の…」
「あ、桐青の…」
そんな事を考えながら1人で歩いていると、桐青の高瀬さんに会った。

「どうしたの?部活?」
ジャージ姿の私を見て尋ねる高瀬さん。
「はい、今買い出し中です。皆は練習してます。」
「ふーん、俺も買い出しついて行って良い?荷物持つから。」
「全然良いですよ。ありがとうございます!」
そして私と高瀬さんは2人で買い出しに行くことになった。

「すみません、すぐ済ませるんで!」
「ん?良いよ別に、ゆっくりで。」
「でも…」
「どうせ俺今日オフで暇だし。」
「すみません、」
「それに俺も優柔不断だから気持ち分かる!」
ははっと笑った高瀬さん、1歳しか違わないのに大人だなぁ。

「私もかなり優柔不断で、とろいんですけど…」
「うん、」
「皆を待たせるのが嫌で、迷惑かけたくなくて、素早くしちゃうんです。」
「あぁ、良くある!」
「でも本当は皆が先に行っちゃうのが怖くて…」
「うん、」
「私のこと待ってる内に、どっかに行っちゃうんじゃないかって…」
「篠岡さん、」
「今日だって皆どっかに行っちゃうかもしれない…、いつも皆男の子だから女の私なんか置いてどんどん進んで行っちゃうんじゃないかって…」
「大丈夫だよ、」
「え?」
「西浦の奴らは絶対に篠岡さんと一緒に歩いて行くよ。それに男だって同じ様に不安なもんだよ。」
「高瀬さん…」
「大丈夫、大丈夫。」

その言葉と笑顔を見ていたらいつの間にか涙が溢れていた。
ずっと我慢していた涙、だからなかなか止まらない。
「すみませ、どうしよ…」
ポケットからハンカチを取り出して拭う。
なかなか止まらない、どうしよう。
「良いよ、」
「え、」
「気が済むまで泣いて良いよ。」
「あの、」
「俺はずっと待っててあげるし。」
「…っく、」
「篠岡さんが泣くのずっと見てるからさ!」
「ひっく…」





結局私が泣き止んだのは5分後だった。
その間高瀬さんは何も言わずに待っていてくれた。

そして買い出しの物も色々吟味しつつも待っている皆の為に早めに決めた。

「すみません、ありがとうございます。」
高瀬さんは重い荷物を半分西浦高校まで持ってくれた。





━End━


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