野球と恋愛は似ている。
[にたものどうし]
野球と恋愛は似ている。
いや、野球と片想いが似ているのか?
“どうすれば強くなれるのか”
と
“どうすれば好きになってもらえるのか”
それらの答えは願うことじゃなくて。
何もしないで待ってることでもなくて。
努力、しなきゃいけない。
…と言っても何も出来ない俺がここにいる訳で。
「あー…俺ってチキン。」
「何?どしたの?」
「何にも出来ないんだよね…、」
今日はモモカンもシガポも来れなくて、部活が珍しくオフ。
ここぞとばかりに最近の悩みのタネについて考えるオレ。
野球についての悩みじゃないからオフの時に悩む。
オンとオフの切り替えは大事ってシガポも言ってた。
授業が終わってから机に突っ伏し続けている。
さっきから心配した奴らが何人か話しかけてくれる。
今回は、声からして田島だろうか。
「何悩んでんの?野球の事じゃないよな?」
「あー、」
「勉強?でもないか…」
「それはお前がもうちょっと悩め。」
「うーん、じゃあ…恋愛?」
「………。」
「図星?」
「…そうかも。」
「どういう悩み?」
「好きなやつに話しかけるとかできねーから進展がない。」
「へー、結論出た?」
「努力するとか…ありきたり。」
「ふーん、じゃあさ…女子の意見聞いてみるとかどう!?」
「は…?」
「だって恋愛の悩みって異性に聞くのが1番って言わない?」
「初めて聞いた。」
「言うから!で、どう思う?」
「は?誰かいんの…」
そこでやっと重い体(精神的に)を起こした。
目を閉じて机に突っ伏していたから、光が少し眩しくて。
その光の後に俺の目がとらえたのは、
「篠岡…!?」
「あは…ごめん、聞いちゃった。」
そこには申し訳なさそうな篠岡がいた。
「いや、あー…」
「今ミーティングしてて、泉君連絡取れないからどうしたのかと思って…」
「わり…」
何故か気まずい雰囲気が流れる中、田島の携帯が鳴った。
「もしもし!?花井?」
「あー今?泉の悩み相談中ー」
「えー、分かった。」
田島は口を尖らせながら携帯を閉じた。
電話の相手は花井だったらしい。
「花井君、何て…?」
「俺に聞きたいことがあるから帰って来いってさ!篠岡は泉の悩み解決してから来て!」
「え?え?」
「じゃあ!泉もちゃんと部室来いよ!」
「おー。」
田島は風の様に去っていった。
ということで俺は教室に篠岡と2人になったわけだが。
「ごめん、俺メールも電話も気付かなかった。」
「いやいや大丈夫!…泉君悩んでたのにごめんね。」
「いや…あれは、」
「わたしで良ければ相談のるし!役に立たないかもしれないけど…」
「…好きな子が目の前にいるのに上手く喋れないんだけど。」
「…上手く喋る必要はないと思うけどな?ありのままの泉君が話したいことをありのまま話せば良いんだよ。」
「じゃあありのまま言ってみようかな…」
「うん、それが1番だよ!」
「…その好きな子って篠岡なんだけど。」
やっぱり野球と恋愛は似ている。
何が起きるか分からない。
━End━