[抱きしめたい。2]
変わってない。
「あ、メール…」
そう言って携帯を見ながらぺたぺたとリビングを歩く女。
歩きながらそんな事すんな、と言おうとした瞬間、体勢を崩したその女。
慌てながらも慣れた手付きでその女を支える俺。
抱きとめた。
「はひ、ありがとうございます…」
腕の中でほっとした様に微笑む女。
「だから気をつけろっていつも言ってんだろ。」
舌打ちをして皮肉を言う俺。
「…10年前から。」
最早、日常茶飯事。
…10年前から。
「でも獄寺さんの腕の中、落ち着くんです。」
「は、」
「だからハルはいくら注意されても…よそ見、やめられないんです。」
「アホか。」
まだぎゅう、と彼女を抱きしめたまま。
溢れる想いを1つも溢さないように。
優しく。
初めてこいつを抱きしめた時。
華奢な身体に驚いた。
失恋に泣いていたっけ。
その時俺達は付き合ってもいなかったけれど、もしこの先付き合うことがあったなら、こいつの傷も涙も悲しみも寂しさも苦しみも全部全部、俺が抱きしめて受け止めようと思ったもんだ。
今は回数も減ったけれど、こいつが涙を流した時、必ず俺はこいつを抱きしめている。
2人の間で共有する体温と一緒に、想いとか感情とか全てのことが伝い合う気がして。
何があっても、どんなことも、俺が抱きとめるから。
全てのことを2人で受け止めて行くから。
心配しないで。
「獄寺さん、」
「ん…?」
「もうちょっと、このままが良い。」
抱きしめたい想いを、君と一緒に抱きしめて。
ずっと。
━End━
*あとがき
みすちるさんの抱きしめたいをイメージで。