飴かクッキーかそれとも、

――バアァァアアアン!

「っハッピーハロウィンだよ遊ちゃぁあああん!!!
てことでとりっくおあとりーと!」


うるさい音を響かせて部屋に入ってきたのはばか明。
名前のとおりとてつもなく明るい性格を保持しているトラブルメーカー。
そんな馬鹿に救われることがあるなんて情けなさすぎるわ俺。


「うっさい。ドア壊れたらどうしてくれるわけ?」

「あうやっそ、それはやわな造りしてるドアが悪いんだよ!
あたしなんかの勢いで壊れてたら兄ちゃんの勢いに耐えらんないよ!!」

「…俊祐さんはここ来ねぇだろ。てーか言い逃れとかかっこわるー」


明の兄、俊介さんは明に勝るとも劣らずの元気な人。というかただのシスコン。
明の弟はめちゃくちゃいい奴なのに。なんでこんな破天荒なんだ明も俊介さんも。いや、そんな人間に囲まれてるから瞭はまともなのか。


「うー今日遊いつもにましていじわるだ…」

「いや、正当だろ。で?謝罪もなし?」

「…ごめんなさい今度からは気をつけますだからねえにらまないで」


や、睨んでないし。
怯えすぎだろこいつ。……そんなにいじめてねぇよな?俺。 たぶん。


「まあいいけど。
どうしたわけ? へったくそな英語さらしておいて」

「へっへたくそ!?ちょ、あれはわざとだからね!?っていうか遊斗だってあたしとそんな成績変わんないじゃん!てゆかむしろあたしのが良いし!!」

「成績と発音は関係ねーよ?」

「う、とっとにかく!とりっくおあとりーと!!」
んっ!

ん、といいながら手を差し出してくるばか。
……未だに入ってきたときのまま立っている明はミニスカだったりする。んで俺はベッドを背にして座ってるという状況。
ちなみに俺の部屋はそんなに広くない。…これでも男なんだけどな。
はぁー。ほんとばか。
煽ってやると思ったとおりに乗ってくる明は本当におもちゃでいいと思う。おもちゃが妥当だと思う。
人間(おもちゃ)みたいな。ほら、電池もいらねぇし。
つーかもうほんとばか。


「はいはい。飴でいいわけ?下いったらビ●コとかあるけど?」

「はーいじゃあいたずらだねってえええ!?なんで今持ってんの!?遊のイメージじゃない!っていうかいつも置いてないじゃん!」

「昨日もらったやつ。お前も佐原にもらわなかった?」

「あ、もらった。なんか口に合わないとかいってたやつだよね」

「ん。お前美味いっつってただろ」

「うん、美味しかった。ってことはあれ?遊食べてないの?」

「あん時ガム食ってたし。お前にはお菓子要求されるし?」

「あ、やーじゃあいいよ。下にお菓子食べに行こう!」

「ん。と、その前に」

「ふぉ?」

「Trick or treat?」


下に行こうと振り返った明の腕を軽く引いて言ってやると、見事なあほ面。
それが言われたことに対してだったのか、近くに俺が立っていたからかは知らねぇけど。
途端に焦りだした顔に、何も持っていないことは容易に想像できて。

だからひとつ、とびっきりの悪戯を。


「――――」

「――っ!   ゆっう!?」


「あ、母さんがクッキー焼いてってたけどそれ食う?コーヒーなら煎れるけど」


そう言い置いて部屋を出る。
階段を下りる途中で明の悲鳴ともつかないような唸り声が聞こえた。



甘い悪戯はいかがですか?

(かわいい悪戯だろ?これくらい)(な、どこが!)(むしろご褒美じゃん?)(で、だ、もっ)(ん?)(…卑怯、だ)(ふ、なにそれ)(だって)(言っとくけど俺のが好きだから)(な、んで今日こんなあまいの)(さっき言ってたこととは逆だけどな)(それはそれこれはこれですよ…)


_________________
memo.
20101024 hina

(はろうぃんきかくだいいちだん!
 一回やろうとして挫折した思い出があります、はい。
 そんなこんなでハロウィン祭り)

20110303
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bkm



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