忍足侑士 (甘)

「いい加減、機嫌直してくれへん?」
「むぅ……っ」
「そんな可愛い膨れ方されても怖ないで?」

かれこれこんなやり取りをすること10分弱。
部室近くで俺の部活終りを待ってくれていた彼女に、ほな帰ろかと手を差し出したら呆気なくその手は無視されて勝手に歩き出してしまい。
何かにご立腹らしいがその理由を知らん俺は何とかご機嫌を取ろうと試みているが一向に彼女の機嫌は良くはならず。

むぅっと頬をハムスターかっ!と思わず突っ込みたくなるほど膨らませて、怒ってますアピールをし続ける彼女を自分は微笑ましい気持ちでつい笑みがこぼれる。
俺より20センチ以上も小さい彼女はほんまに小動物かと思うくらい愛らしい。
ついつい頭を撫でると、むぅっと膨らませていた頬が今度は嬉しそうに緩んだのを見逃さんかった。


「お前はほんま可愛ええな、ご機嫌は直ったか?」
「な、直ってない!まだ怒ってるんだから!」
「ほな、どうすればご機嫌直してくれるん?」

子供じみた彼女の行動には毎回愛しさと微笑ましさと癒しが溢れている。
これが他の女子ならくそめんどいわーと思うんやろけど、惚れ込んどる彼女がやるならば全然面倒でもなければ苦でもない。
部活帰りで疲労感もあるがそれ以上に彼女の行動、仕草、それはもう全部からマイナスイオンが出ているに違いないと思うくらい癒されてしまう。

「…侑士が浮気したのが悪いんだからね」
「は?浮気…何の話や、せえへんよ、そないなこと」
「だって、昨日…鳳くんたちと…」
「昨日て…ラケットのグリップテープ買いに行っただけやけど」
「そう、それ!……ずるい、わたしも行きたかった!」

いきなりの浮気疑惑浮上になぜそんな話が持ち上がったのかと思えば、昨日、鳳たちとグリップテープを買いに行ったことを浮気だととんでもない思考を巡らせた彼女にさすがに苦笑いが漏れる。
けれど、次の瞬間、怒っているのだと主張している彼女が俺の制服の袖をちょんと掴んできて。

「ずるい……わたしだって、もっと侑士と一緒にいたかったのに…、鳳くんたちずるい!」
「…………」
「だから今度からはわたしも一緒に行く!……ダメって言ったら、半日は口聞いてあげないんだから!」

侑士、聞いてる?と低い身長で俺を一生懸命見上げる姿に、そして言葉に、身体中に熱が集まっていくのがわかる。
ああ、ほんまに……可愛すぎや……。
鳳たちにまで嫉妬するとか、何なんやこの可愛い生き物。
ここが人通りの多い往来でなければ今すぐにでもキスして押し倒してやりたくなるやん。

「…やっぱりダメ?面倒くさい……?」
「ダメやない、お前やったら…何でも受け入れたるわ」

もっと一緒に居りたい、その気持ちは俺も同じやから。
とりあえずいまは、ご機嫌もようやく直ったらしい彼女の手を握り締めて。
家路を急ごう、早くお前のことぎゅって抱きしめたいから。
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