君との交換日記

Step.2 妹より。01

六月某日。
お姉ちゃん、お元気ですか。私は元気ですよ、もう誰かにこの元気を分けてしまいたいくらいには。この間元気が有り余り過ぎて短刀達と鬼ごっこしていたら、歌仙さんには『雅じゃない』って険しい顔で言われてしまいました。少し堪えたけれど、愛が故の発言だと信じています。

先日はどうもお世話になりました。まさか演練の相手がお姉ちゃんだなんて思わなくて、涙が止まらなくて大変でした。周りの刀剣達も心配してましたよね。でも双子で良かった、微妙に似てるから直ぐ分かる。
取り敢えず、再会を果たすことが出来て良かったです。


…と、これじゃあお手紙になっちゃってますね。日記始めます。


私達が審神者になって幾数年。離れていた分そちらの事情が気になります。出来れば次のページにでも書いてくれるとうれしいです。

私の本丸は基本賑やかで、優しい人(神様って呼ぶべきなのかな)ばかりです。まだ全部の刀を揃えている訳ではないけれど、まぁそれなりの数の刀剣が居ます。審神者歴長いですもんね、嫌でも刀剣集まります。

因みに私の初期刀は加州清光です。覚えていますか、私、まだお姉ちゃんと暮らしていた頃に新選組ブームで、沖田総司さんに憧れていたんですよ。五振りの刀見せられたときに一瞬で決定しちゃいました。
今も清光は元気です。時々安定と喧嘩してるけれど、仲がいいからこその物だと考えてます。

私の本丸で一番最近来てくれたのが、鶴おじい…鶴丸国永です。噂に聞いていた通りの驚き好きで、もう心臓止まるかと思うことがよくあります。
今朝なんて…


△▼△


「あーるじ、おはよ!髪結ってあげるよーハイ支度支度!」
「…きよみつ?」


頭の上から声がして目が覚めた。いや、何故お前がここに。普段ノックしてから入るようにあれだけ言っておいて、それをスルーしたのか貴様。まぁ可愛いから許すけど。
そう思ってむくり、と身体を起こして時計に目をやる。


「…きよみつ、おはやい…まだ5時ですよ…」
「…審神者会議に出るからこの時間に起こしてって言ったの主じゃん。因みに4時55分、主に言われた通りの時間だよ?」
「ハイそうでしたごめんなさいありがとう至極感謝です清光愛してる超愛してる」
「ほんと!?」
「…ウン」

何この子可愛い。明らか雑な言葉なのにこの喜び様。だから清光は可愛いんだよなー、可愛いは作れるって言うけど、それは正論だったのか。
因みに、最後の箇所に関しては手を抜いてはいない。常に全力で自分に正直に。これ私のモットー。


「清光、わざわざ頼んじゃってごめんね?音ただ漏れで目覚まし時計鳴らして、本丸中の刀剣起こすのも忍びなくって…」
「いいんだよ、別に。俺的には主の寝顔見れて役得だし」
「あ、そう…」
「でも目覚まし時計に関しては心配要らないんじゃないかな?」
「へ、何で?」
「だって昨日…」


ジリジリジリジリジリジリジリジリ!!!
突然当の目覚まし時計の音が本丸中に響く。しかも複数。遅れて遠くで短刀の泣き声が聞こえた。びっくりしたんだなきっと。
私もびっくりして変な声上がった。寝起きだから少し喉がひりつく。


「誰だよ仕掛けたの!というかうっさいなもう!」
「俺だ!驚いたか!」
「鶴おじいちゃん貴様かーー!」


すぱーんと清々しい音と共に登場した鶴おじいちゃんに力の限り突っ込みを入れた。もうあれだけの音で目覚まし鳴ってるんだから、周り気にする必用ないよね!


「おじいの阿呆…何で目覚まし鳴ってるの」
「一応皆の意見なんだぜ?朝から仕事の主をきちんと見送ろうって」
「…主、それは本当だよ」
「…それについて疑わないけど本当は?」
「俺が主を驚かしたかったのもある」
「根本的理由そこだろ!」


駄目だこのじじい。マイペース過ぎる。


「…っと、そろそろ時間か。主、着替えるだろう。俺はもう行くぜ。」
「あ、じゃあ俺も行く。廊下に居るから主、終わったら声掛けて」
「へ、あ、うん…」


△▼△


…と言う事がありまして、その後眠たそうに目を擦ってたり泣いてたりする短刀達や、低血圧なのか妙に機嫌の悪い打刀、そしてめっちゃ笑顔で見送る脇差と太刀、大太刀一同に見送られて本丸を出たんです。一応確認したところ、皆が意見を一致させて朝起きる事になったらしいです、優しいですよね。でもあの『目覚まし事件』に関しては鶴おじいの独断で、一部の短刀を泣かせた罪で一週間の畑仕事を帰ったらするつもりです。

でも、そんな日常もありかな、なんて思います。間違いなく私は今、しあわせだから。
でも時々、お姉ちゃんに会えないのが寂しくなります。これが終わったら直ぐ会いに行きます。

…お姉ちゃん気付きました?実はこれ、審神者会議中に書いてるんですよ(笑)
だって暇なんですもん、審神者会議。お姉ちゃんの姿が見えるので、会議が終わったら渡しますね。


ではまた。妹より。