元の場所へと戻れば、すでに私以外の三人は集まっており、なんでかナルトに至っては丸太に縛られていた。何やったんだナルト。三人の方へ行けば、ぎゅるるるると素晴らしい腹の虫が左右から鳴り響く。それにしても凄まじい。もうこれは腹の虫達が共鳴している…!


「おーおー腹の虫が鳴っとるね…君達。ところで、この演習についてだが、ま!シオン以外はアカデミーに戻る必要もないな」
「!」
「え」
「シオンちゃんってば何しでかしたんだ?」
「わ、分からない…」


チームプレーが必須だって分かってたのに、それを実行出来なかったから、とか…?


「…そうシオン以外は三人とも…… 忍者をやめろ !」

「!?」
「忍者やめろってどーゆーことだよォ!!そりゃさそりゃさ!確かにスズ取れなかったけど!なんでやめろまで言われなくちゃなんねェんだよ!大体シオンちゃんだってスズ取れてねェじゃん!」
「シオン以外、どいつもこいつも忍者になる資格もねェガキだってことだよ」


そのカカシ先生の言葉に、サスケがカカシ先生へと向かっていくもの、やはり軽々と押さえ付けられてしまう。


「だからガキだってんだ」
「サスケ君を踏むなんてダメー!!」
「お前ら忍者なめてんのか。あ!?」


こんな時までサスケなんだと、サクラのサスケ愛に尊敬の念を抱きそうになった矢先だ。やる気のなさそうな、何処かだるそうな顔ばかりだったカカシ先生の表情が一瞬にして冷ややかなものに変わる。


「何の為に班ごとのチームに分けて演習やってると思ってる」
「え!?…どーゆーこと?」
「つまり……シオン以外はこの試験の答えをまるで理解していない…」
「答え…?それに、シオンは分かってるって…」
「そうだ。この試験の合否を判断する答えだ。シオンはすでにその答えに気づいている」
「だから…さっきからそれが聞きたいんです」
「………ったく、」
「あーもー!だから答えって何だってばよォ!?」
「シオン、教えてやれ」
「…チームワーク、だと思います」
「そうだ」
「!」


ハッとした顔をするナルト達三人に、なんだか居た堪れない気持ちになってくる。


「四人でくれば、スズを取れたかもな」
「なんでスズ二つしかないのにチームワークなわけェ?四人で必死にスズ取ったとして、一人我慢しなきゃなんないなんて、チームワークどころか仲間割れよ!」
「当たり前だ!これはわざと仲間割れするよう仕組んだ試験だ」
「え!?」
「(やっぱり…)」
「この仕組まれた試験内容の状況下でもなお、自分の利害に関係なく、チームワークを優先できる者を選抜するのが目的だった。それなのにお前ら三人ときたら…サクラ、お前は目の前のナルトじゃなくどこに居るのかも分からないサスケのことばかり」
「!!」
「ナルト!お前は一人で独走するだけ。サスケ、お前は三人を足手まといだと決めつけ個人プレイ」
「……」
「そんな中シオンはこの試験の答えに気づき、協力を試みた。ま、断られたみたいだが」
「………」


ちらりと視線をやれば、サスケはどこか罰が悪そうで、サクラは申し訳なさそうに項垂れている。顔を上げたサクラと目が合ったので、気にしないでとの意味を込めて笑ってみた。サクラの口が声は出さずともごめんと動いたのが分かったのでまたへらっと笑っておいた。


「任務は班で行う!たしかに任務にとって卓越した個人技能は必要だ。が、それ以上に重要視されるのはチームワーク。チームワークを乱す個人プレイは仲間を危機に落とし入れ、殺すことになる」


話しながら何故かポーチへと手を伸ばしたカカシ先生。どうかしたのかと見ていれば、いきなり取り出したクナイをサスケの首元へと宛がう。


「サクラ!シオン!ナルトを殺せ!さもないとサスケが死ぬぞ」
「!」
「え!?」


ポーチからクナイが見えた時点で、反射的にこちらもクナイを構えたが、サスケが捕らえられている以上どうにもできないわけで。カカシ先生はこれが言いたかったわけか。そんな予想通り、カカシ先生はサスケを解放し、上から退く。


「と…こうなる。人質を取られた挙げ句、無理な二択を迫られ殺される。任務は命懸けの仕事ばかりだ!」
「、……」
「これを見ろ。この石に刻んである無数の名前。これは全て里で英雄と呼ばれている忍者達だ」


カカシ先生の目の前にはひとつの石碑。任務中に殉職した人達の慰霊碑だ。それゆえ、次のナルトの発言には目を見開く。知らないのだろうが、褒められたものじゃない。


「それそろそれーっ!それいーっ!オレもそこに名を刻むってことを今決めたー!英雄!英雄!犬死になんてするかってばよ!」
「!」
「フン…」
「ナルト」
「なんだってばよ?」
「そこに眠っているのは、任務中殉職した英雄達だよ」
「!!」
「そこに名を刻むっていうのがどういうことか、分かるはずだよ。これからは軽々しくそんなことを言っちゃ、駄目だ」
「…………」


流石のナルトも黙り込み、沈黙が辺りを包む。破ったのは、カカシ先生。


「この慰霊碑の中にはオレの親友の名も刻まれている……」
「!…」
「…お前ら…!最後にもう一度だけチャンスをやる。ただし昼からはもっと過酷なスズ取り合戦だ!シオンは参加してもしなくてもいい。勿論手を貸す貸さないも自由だ。挑戦したい奴だけ弁当を食え。ただしナルトには食わせるな」
「え?」
「ルール破って一人昼飯食おうとしたバツだ。もし食わせたりしたらそいつをその時点で試験失格にする。ここではオレがルールだ。分かったな」


カカシ先生が去り、残された私達はとりあえず腰を下ろし弁当を食べ始める。ナルトは食べなくても平気だと強がっているが、ナルトの腹は先程から煩いくらいに限界だと、食べ物を求め雄叫びを挙げている。


「……はいナルト、口開けて」
「な、ちょ、シオン!?」
「朝も思ったけど、腹の虫がすごいね。だから、はい」
「で、でも!」
「シオン…」
「もしかして朝ごはん食べて来てないとか?だったら余計に辛いだろうし。だからさ、遠慮しないで」
「ってことは、シオンちゃんは食べてきたのか!?」
「え?勿論」
「…あんたねえ……」
「はぁ、ウスラトンカチ」


呆れた様子の三人の様子にはてなを飛ばしながらも、ナルトへとお弁当を食べさせていると、サスケがナルトにぶっきら棒ながらも弁当を分けるなんてことが起きた。サ、サスケってツンデレだったんだね!新しい発見に思わずにまにましてしまいそうになっていれば、なんとサクラまでもがナルトに弁当を分け始めた。ちょ、なんかいいよすごくいいよ…!これがあれかな。萌えるってやつかな。なんてほのぼのしていれば、風が吹き荒れ鬼の様な形相のカカシ先生。


「お前らあああ!」
「!」
「うわぁああ!!」
「きゃああああ!」
「おお鬼…!」

「ごーかっく」

「え!?……」
「は?」
「……」
「びびびっくりした…」


さっきの表情とは一変して、ニコリと笑いながらそう言ったカカシ先生に、当然ながら困惑する。


「合格!?なんで!?」
「お前らが初めてだ」
「?」
「今までの奴らは、素直にオレの言うことをきくだけのボンクラどもばかりだったからな……忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる」
「……」
「………けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
「アハ…」
「フン」
「おおお」
「かっこいい…!」
「これにて演習終わり。全員合格!よォーしィ!第七班は明日より任務開始だァ!」
「やったああってばよォ!オレ忍者!忍者!!忍者!!!」
「帰るぞ」


こうしてめでたく、忍者になることができた。明日からはこのカカシ第七班で任務が行われる。忍としての第一歩を踏み出したというわけだ。わくわくと同時に不安もあるが、この班なら何とかなるだろう。






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