「やあシオン」


ゆっくりと振り返れば、そこにはやはり、今だイチャイチャパラダイスを持ちながら、逆の手でこちらに向かい手を挙げているカカシ先生の姿があった。今はまだ遭遇したくなかった。


「……どうも先生。では」
「おーいシオン、ちょっと待とうか」
「すみません今急いでるんです」
「いやいや違うでしょ?かかってこなくていいの?」
「一人で行っても、スズを取れる自信ないです。パーティーを組んでから挑もうかなと…」
「パーティね…でもサスケとサクラには断られたんでしょ?」
「うぐっ、でも最後にナルトを誘ってみようと思いまして…!」
「あくまで協力してスズを取りにくるつもりね。ま、その考えは正解。だが残念なことにもうそろそろタイムリミットだ。ナルトを誘ってる時間はない」
「え、嘘、」
「嘘なんてつくわけないでしょ。ってことでシオン、かかってこい」
「えー…」
「えーじゃない。個々の能力もみておきたいし。だからほら、おいで」
「おいでって…」


さあさあという顔で見てくるカカシ先生に、やるしかないかと小さく溜息をつく。どうも気が乗らない。だってカカシ先生は確か、コピー忍者なんて呼ばれてるかなりのやり手で。こんな演習で使わないだろうが、写輪眼だって持っている。…いやだが、考え方を変えれば、カカシ先生程の忍と一戦交えることができるのはそうそうあることではない。これは貴重な経験を積めるまたと無いチャンスじゃないか。命がけの戦いじゃ勿論ないし、やれるだけやってみよう。どこまで通用するのか。


「……よし、」
「やぁーっとやる気になったか」
「はい。なので、行きます」


クナイを取り出し、カカシ先生へと放つ。勿論当たるはずもなく、跳び上がり避けたカカシ先生に素早く印を結び術を発動する。


「風遁・真空大玉」
「!」


私が作り出した風の輪は、真っ直ぐにカカシ先生へと向かって行く。そして命中したその瞬間、ぼんと音を立てて消えたカカシ先生に、やはりか。と若干イラッとしてしまう。少しして、木の上に居たらしい本物のカカシ先生が下りてきた。


「まさか風遁を使うとはね。驚いたよ」
「…最初から分身だったんですね」
「最初にシオンを見つけたのが分身の方だったからね」
「?」


首を傾げれば、カカシ先生は少し困ったように目を細めながら私の頭にぽんと手を乗せた。なんでも私は、気配の消し方が上手いらしくなかなか見つからなかったらしい。それで私を見つける為に、サクラの叫び声で釣り、誘き寄せたところを分身を使って探したということらしい。確かにかくれんぼは得意だったよ。少し得意げに笑えば、カカシ先生は私の頭に乗せたままだった手でわしゃわしゃと頭を撫で回してきた。別にセットしているわけじゃないがこれじゃぐちゃぐちゃになるじゃないか!なんて思いながらも、久しぶりのそれに、胸の辺りがほこほこした。


「…なんか先生が先生っぽいです」
「先生っぽいじゃなくて、俺は先生なの」
「ふは、そうでした」
「でもいいの?」
「はい?」
「スズ取らなくて」
「え、」

――ジリリリリリ
鳴り響いた終了の合図に、ぽかんとした後、ハッとする。


「し、しまった…!」
「あらら。さっきなら俺も油断してたし、スズ取れたかもしれなかったのに」
「うああああ」
「嘆かない嘆かない。ほら、最初の場所に戻るよ」


不合格不合格アカデミーもう一回、なんて言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。






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