「ふあーあ。ねむ、」


欠伸をいくつもかましながら、集合場所である第三演習場へと向かう。端から見れば緊張感など全く感じないのだろうが、一応下忍になれるかどうかの演習へと向かっている。確か卒業生28名の内下忍として認められるのが…あれ?確かあんまりいなくて、残りはアカデミーへ戻されるらしい。冗談じゃないぞそんなこと。せっかくここまで来たんだから忍者になりたいんだよものすごく。

第三演習場に着くと、なんと一番乗りだった。ならもう少しゆっくり朝ご飯食べればよかったな。そうこう考えているとやって来たのはサスケだ。


「おはよう。サスケ」
「、ああ。…早いな」
「……もしや私が早いの、意外だと思った?」
「…朝が得意そうには見えない」
「そうかな?意外と朝は得意なんだけどな」


そう言った私に、サスケはやはり意外だと言う顔をする。まあよくのんびりしてるとか、お気楽そうだとか言われるからきっと、朝が得意なタイプには見えないとは思う。しかし実際朝は大抵早起きとまではいかなくとも、余裕を持って起きるのだが。


そして、集合時間から有に二時間は過ぎた頃堂々と遅刻してやってきたカカシ先生により、演習についての説明を聞かされたのだった。課題はカカシ先生の持っているスズを奪い取ること。しかしスズの数は私達四人に対し、三つしかない。つまり一人は確実にスズを取れなくて任務失敗となるわけだ。スズを取れなければアカデミーに強制送還。ついでにいうと、昼ご飯抜きで丸太に縛り付けられた挙句、目の前でさも美味しそうに弁当を食われる様を見ておかなければならないらしい。地獄に違いないはずだ。
途中カカシ先生の挑発にまんまと乗せられたナルトが、いとも簡単に押さえつけられたりとありはしたが、そのおかげでナルトは勿論サスケやサクラも気を引き締め直したところで、カカシ先生は開始の合図を言い放ったのだった。
合図と同時に気配を消し隠れ、スズを取るチャンスを窺うことする。よしもちつけ、じゃない落ち着け自分。とりあえず作戦を立てよう。ナルトが忍者らしからず、正面からカカシ先生に勝負を吹っ掛けているのを横目にうーむと考える。正直なところ、カカシ先生からスズを奪うのはかなり骨が折れると思う。その前に、取れる…のか?というか取れる取れないの前に、先生は一対一でスズを奪うことを求めているわけじゃないと思う。正式に下忍にもなっていない忍者の卵が上忍に勝てるわけないし、先生がある程度手を抜いて、定めたラインをクリアした者にわざとスズを奪われる仕組みだとしても、それじゃあ皆で演習をやってる意味がない。実力を見たいなら一人ずつ組み手でも何でもやればいいのだから。だから先生が試しているのは、実力の他にもあって…、


「あ!」


思わずあげてしまった声にハッと口を覆う。もはやナルトで遊んでいるといっても過言じゃないカカシ先生がポーチから取り出したのはクナイ、ではなく何とも怪しげな本・イチャイチャパラダイス(しかも中巻…!)だった。私はあれをよく知っている。あれは18禁だ。読みたがったが読ませてもらえなかった為、内容の詳細は分からないが。もう一度言おう。あれは18禁だ。

目の前で本を読まれ憤慨したナルトは、勢いよくカカシ先生に突っ込んでいくが、やはり軽くかわされてしまう。そのままカカシ先生はナルトの後ろに回り込んで、虎の印を結んだかと思えば強烈なカンチョウを食らわしたのだった。あれは痛い。ナルトのダメージを考えると泣きたくなってしまった。ナルトどんまい。しかしいくら頑張ったところで、今のナルトでは正直スズは取れないと思う。実力に差が有り過ぎる。折角チームを組んでるんだから、協力すれば可能性はないわけではないと思うけ、ど……。


「そっか…!」


この演習の目的は協力することにあるのだ。そうだったら演習をチームで行うことにも、スズが三つしかないことにも納得がいく。協力させない為に、わざとスズは人数分用意されていないに違いない。先生は利害の一致に関係なく、任務遂行の為ならば協力出来るかという協調性を試しているのだ。おかしいと思ってたんだよね。始めから一人は不合格だと決め付けてしまうのは合理的じゃない。全員が下忍になるに相応しい能力を持っていた場合、その人材を取りこぼす様なことは里として好ましくないはずだし。よし、すっきりだ。そして、そうと分かればやることはひとつだ。まだやり合っているナルトとカカシ先生を確認し、サスケとサクラを探すことにする。近いのはサクラか。


「サクラ」
「!?、シオン!あ、あのね、いい、今、そこの木のとこにサスケ君が…!」
「サスケ?いないけど?」
「あ、あれ?気のせい…だったのかしら…」
「?あのさサクラ、提案なんだけど協力して鈴を取らない?」
「え?でも鈴は3つしかないのよ。協力してもし鈴が取れても、誰か一人は不合格なわけだし、もめるだけじゃない」
「確かにスズは三つしかないけど、せっかくのチームなんだし」
「でもなぁ…じゃあサスケ君は何て言ったの?」
「サスケはこれから誘ってみるつもりだよ。望みはあんまりないけど…」
「そうよね…やっぱり、サスケ君断るだろうから私も協力はできない。ナルトと三人で行ってスズが取れたとして、サスケ君が落ちるのは嫌だし」
「そっかあ」
「ごめん。シオン」
「いやいや!無理強いは駄目だし、気にしないで。とりあえず、お互い頑張ろう。それじゃあ」


大丈夫だ次がある。待ってろうちはサスケ…!まあ、サクラより望み薄なわけなのだが。


「!……」
「………」
「…………サスケ、」
「……、」
「…だ、大丈夫気にしないから。触れて欲しくないのならスルーするから、」
「、とりあえず出してくれ」
「う、うん」


次はサスケを誘おうと来てみれば、カカシ先生にやられてしまったらしいサスケが、首から下は地面に埋まった生首状態でお出迎えしてくれた。やばいぞ。これは中々に面白い絵図らだ。まさに珍百景…!我慢しきれず小さく肩を揺らしながらサスケを掘り出せば、どうやらバレたらしく軽く睨まれた。


「カカシ先生、一筋縄じゃいかないみたいだね」
「上忍なだけはある。お前はまだカカシとやり合ってないのか?」
「うん。一人じゃあんまり自信ないし。そこで提案なんだけど、」
「……」
「協力してスズを取らない?」
「…悪いな。俺は一人でやる」
「そっか…ん、分かった。次は取れそう?」
「さっきやり合った時スズに触れた。次は取る」
「おおー。じゃあお互い頑張ろうね」

二人に断られたとあって、若干、いや結構落ち込むがまだ演習は終わっていない。改めてナルトを探そうとした矢先に聞こえたサクラの叫び声。気になって仕方がないので、再度サクラの元へ向かっていた時だった。自分以外の気配に動きを止める。どうやら私の番というわけらしい。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -