やばい。何てことだ。今までさりげなく回避してきたというのに、これじゃあ水の泡じゃないか。うああ、何故なんだ。よりにもよって、何故こうなるんだ…!

思わず机に突っ伏してうなだれるシオンに、どうしたのかと声をかけたのは、翡翠の瞳に桃色の髪を揺らす少女、春野サクラ。そしてそんなサクラの声でうなだれるシオンに気付き、顔を覗き込んできたのはうずまきナルト。


「シオン、具合でも悪いの?」
「いんや。大丈夫大丈夫」
「でもさ、なーんか難しい顔してるってばよ?」
「あーちょっと眠たいだけ。でも先生いつ来るか分かんないし、寝るに寝れないなあって」


悶々と考えていた内容を口にするわけにもいかず、適当に返答しながら、なおも近くにあったナルトの瞳を見る。空をそのまま映したみたいだな、なんてぼんやりと思った。それに加え金色の髪は、ナルト自身の人柄同様太陽のようだ。


「でもいくらなんでも遅すぎるわよね」
「どんだけ待たせるんだってばよー!オレ達の班以外はとっくに行っちまったってのに!」
「うるせェ、ドベ」
「んなっ、いきなり何だってばよサスケェ!」
「騒いだって担当上忍が来るわけじゃねェだろうが」
「サスケくんの言う通りよナルト!少し静かにして」
「サ、サクラちゃぁん…」


ナルトがメラメラと闘志を燃やし、サクラが熱い視線を送るのはうちはサスケ。漆黒の髪は癖ひとつなく、同色の瞳は鋭い。そしてその端正な顔立ちに加えクールな性格というわけで大変モテる。それはもうモッテモテである。

このナルト、サクラ、サスケの三人とは、先程軽く自己紹介を終えたところだ。それはこれまでシオンが、この三人とさほど親しくなかったからである。故意に適度な距離を保ちつつ、特別親しくなることがないようただの同級生として過ごしてきた。なのに、なのに…!いや、そもそも今日は朝からついていなかった。目覚めは全然スッキリじゃなかったし、お弁当を忘れて一度家に戻る羽目になって、これでやっと出発なんて思えば次は額当てを忘れるし、小石かと思って蹴った石は道の凹凸ですんごく痛かったし。アカデミーに来るまでで一苦労だったなあ。まあアカデミーに着いてからは普通だったけれど。それにすごく面白いというか貴重というか衝撃的なものも見れた。ぼややっとその時のことを思い出す。


「おはよー、ヒナタ」
「おはよう。シオン」


アカデミーで一番仲の良いヒナタの隣に腰を下ろす。軽く微笑みながら挨拶を返してくれたヒナタに、シオンも自然と微笑み返せば、何やらほわほわとした空気が生まれた。

所謂トリップというものをしてしまったシオンは、下手に主要人物達に接触して未来に何らかの影響を及ぼすのも、ましてや危険なことに巻き込まれるのもごめんであった。イレギュラーな存在である自分がいなくとも、むしろ居ない方が世界は正しく廻るのだから。そう考えたシオンは、ナルト達と最低限しか関わろうとはしなかった。しかしヒナタだけは例外で、何かとすぐに顔を赤くするヒナタが可愛い過ぎて、度々絡んでいたらいつの間にか一緒に行動を共にするようになっていた。ヒナタと仲良くするくらいではさほど物語に影響は及ぼさないだろうと納得し、ヒナタとは普段から仲良くさせてもらっているわけだ。

がやがやと騒がしい中、ちらりとナルト達の方へと目をやれば、ナルトが机に乗り上げ、サスケへと睨みを効かせているところだった。うわお、近いなあ二人とも。なんて思いながら何となく気になり見ていることにする。すると一人の少年がナルトにぶつかり、ナルトの身体はぐらりと前へ倒れる。そんなナルトの倒れる先にはサスケ。


「―――あ、」


思わず零れた声とほぼ同時だった。ナルトとサスケの唇が重なったのは。自身の声に何事かと視線の先へと目を向けようとしたヒナタの視界を塞ぐ。ヒナタがナルトを好きだというのは言わずもがな。私はバッチリ知っている。見せない方がいいだろうとの判断を下した。そして再度二人へと目をやれば、流石にもう両者顔を青ざめ離れている。そしてサクラ、いのを筆頭とする女子達は般若のような顔でナルトへと詰め寄っていた。まああれだろう。サスケくんのファーストキスは私が頂くはずだったのにとかそういうのに違いない。というか二人ともファーストキスだったよねきっと。あはは乙。


なんて密かに笑っていたからだろうか。気付けばあれよあれよと言う間にナルト、サクラ、サスケと同じ班になっていたのだ。何度目か分からないが何でよりにもよってこの班なんだ。よりにもよって。……いきなりフラグ立ち過ぎだろ。






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