妙な息苦しさに加え、胸の圧迫感に目を覚ませば、視界が暗かった。どうやらうつ伏せに、しかも顔は真正面を向いた状態で寝ているらしい。どうりで圧迫感を感じ息苦しかったわけだ。とりあえず状況を理解しようと顔を左側に向けてみるが誰もおらず、ならばと右側を向けばサスケが壁にもたれるように座り込んでいた。目は閉じられているので、寝ているのだろうか。サスケ以外の姿は見えず、とりあえず起き上がろうと手をつき身を捩った瞬間、背中に鋭い痛みが走った。思わず呻き声を上げ再び布団へとダイブすれば、すぐ近くで聞こえた舌打ちにびくりとする。見れば、いつの間に起きたのかすぐ隣までサスケが来ていた。何やら目いっぱい眉間に皺を寄せてだ。


「…あ、サスケ起きたんだね」
「っんのウスラトンカチ…!」
「い、いきなり!?」
「…お前は背中を強打して、酷い打撲になってる。だから無理に起き上がろうとするな」
「どうりで痛いはずだ…はは。……サスケや皆は大丈夫なの?こうやってるってことは再不斬は何とかしたんでしょ?ケガ、してない?」
「っ、お前…!」
「え、やっぱりどこかケガした?」
「……ハァ。カカシは写輪眼の使用による疲労で倒れはしたが、一度目覚めはしたし、外傷もほとんどない。一週間は動けないらしいが。残りはあっても掠り傷程度だ」
「そっか。よかった…結局私、再不斬も倒せないで、一人で勝手にやられただけだったなー」
「、…いや、お前は、」

「あー!サクラちゃん!シオンちゃんが起きてるってばよ!」
「え!?ほんと!?」


バタバタと突入してきたナルトとサクラによって、場の空気は一気ににぎやかなものになった。二人が入ってきた時、一瞬サスケの顔がものすごく歪んだ気がしたけれど、気のせいに違いない。それから三人に話を聞くと、私が倒れた後、ナルトとサスケの見事なコンビネーションプレイでカカシ先生を助け出し(二人のコンビなんて滅多に見れないから見ておきたかった…!)、自由になったカカシ先生が写輪眼で再不斬を追い詰めたらしい。しかしトドメだというところで、突如現れた霧隠れの追い忍と名乗る少年が、一撃で再不斬を倒してしまったらしい。再不斬を簡単に倒してしまえる程の少年とは、素直にすごいと思う。それと同時に同時に悔しくもあった。気絶しておいてなんだが、私も再不斬本体と戦ってみたかった。そう考えて、まさか自分がこんな感情を抱くなんてと驚く。せ、戦闘マニアの見習いになったのか自分…!いや違う断じて違う。


「それとね…カカシ先生が起きて発覚した、限りなく事実に近い仮説なんだけど…」
「な、なに…?」
「さっき、再不斬は追い忍の少年に殺されて死んだって言ったわよね…?でも本当はその少年は再不斬の仲間で、再不斬はおそらく、」
「……」


胸がどくどくと脈打つ。サクラがこれから口にするであろう言葉に、確かに期待している私がいる。


「――生きてるって」
「…そっか」
「ってシオン、驚かないの?」
「これでも驚いてるよ?」
「全然そんな風には見えないんだけど」
「あははー」
「……お前まさか、また再不斬と戦えるのが嬉しいのか?」
「え、サスケ君ったらぁ!いくらシオンが変わってるからって、そんなこと思うわけ、」
「図星だろ?」
「……ちょ、ちょっとだけ…」
「ハァアア!?あんた本気!?再不斬が生きてて嬉しいなんて…!」
「それ、それ!オレもその気持ち分かるってばよ!」
「ナ、ナルトまで…!あんた達どこの戦闘マニアよ…」


サクラのその一言は、ぐさっと心に突き刺さった。
「あ、そういえば、その抜け忍を名乗った子が倒れてたシオンを抱えて連れて来たのよ」
「え、……ああ、そっか…」
「何よ。どうかした?」
「ううん。何でもない」


気を失っていた時に誰かの声が聞こえた気がしたが、その子だったらしい。かなりぼやっとした感じでだから確証はないけれど。


「そんなことより!」
「な、なに…!?」
「〜〜ああもう!!」
「サクラ!?どうしたの悶えて!」
「悶えたくもなるわよ!思い出しただけで羨ましいったらないわ!」
「?」
「あのねシオン、」


急に悶えた後、じとっとした視線を送って来るサクラ。な、何なんだ。助け舟をとナルトとサスケを見ても二人も分からないみたいだし…。
ドキドキしながらサクラの言葉を待っていれば、いきなり腕を掴まれ部屋の隅へ連れて行かれる。ちょ、背中が!背中が…!そして興奮を無理矢理押し殺しましたという小声で囁く。


「シオンを此処まで連れて来たのはサスケ君よ!?それも…おんぶよおんぶ!ああもう羨ましい!サスケ君のおんぶなんて!なんでシオンなのよ〜!」
「そ、それは私が気絶した、」
「にしてもサスケ君ってやっぱり優しいわよね!クールさの中に見え隠れするぶっきらぼうな優しさ!」
「サクラ、落ち着い、」
「ねえねえ、さっきから二人で何話してるんだってばよ?」
「サスケ君がシオンを此処まで抱えて来たって話よ!サスケ君ったら軽々運んじゃうんだもん!流石よね!」


あれ?聞かれたくないから二人から離れたのでは?と思ったがスルーしよう。サスケのことになるとサクラは説明できない暴走をする恋する乙女だものね。
…にしても、サスケが運んでくれたんだ。なんか意外だ。というか素直に驚いた。普通ならカカシ先生だろうけど、カカシ先生も気絶してたみたいだし、そのカカシ先生をタズナさんが運んだらしいから、必然的に私は女の子のサクラと私より小柄なナルトを除外してサスケになったのかね。


「んなのオレだってよゆーだってばよ!大体シオンちゃんはオレが運ぼうと思ってたのにさー」
「ふん。お前には無理だ」
「無理じゃねェ!よゆーだよゆー!!」
「シオンより小せェ奴がよく言うぜ」
「んな!?じゃあ見てろってばよ!シオンちゃんくらい軽ーく持ち上げてやっからなァ!ってことではいシオンちゃん!」
「いやいやそんな背中を向けられても」
「そうよナルト!シオンは怪我してるんだから無理に動かすんじゃないの!」
「そういうサクラちゃんだってさっきシオンちゃんを引っ張ってた、」
「何か言った?」
「いいいや何でもないってばよ」
「そう」


やっぱりナルトはサクラに弱いなあなんて笑っていれば、ふと感じた視線。目を向ければバチっとサスケと目が合う。サスケは驚いた様子で軽く目を見開いたかと思えば、何故か罰が悪そうというか気まずそうに目を逸らされた。授業中に女子同士目が合った時みたいに笑ってくれたらいいのに。いや、サスケに限ってそれはありえないか。






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