カカシ先生が再不斬の水牢の術によって捕まってしまったことにより、再不斬が自ら術を解くまで、カカシ先生は動けない。となれば、私達だけで何とかしなければならなくなったわけだが、到底そう簡単にはいかないはずだ。
どうしたものかと固まる私達に、現れたのは水分身。水牢の術のため、再不斬の本体はその場から動くことができないが、本体が動かずとも私達くらい余裕と言いたいらしい。


「ククッ…偉そーに額当てまでして忍者気取りか…だがな、本当の忍者ってのはいくつもの死線を越えた者のことをいうんだよ」
「……」
「つまり…オレ様の手配書にのる程度になって初めて忍者と呼べる…お前らみたいなのは忍者とは呼ばねェ」
「…!、ナルト!」
「!!」


素早く移動した再不斬の水分身は、容赦なくナルトを蹴り飛ばす。そして蹴り飛ばした拍子に外れたナルトの額当てを踏みつける。


「ただのガキだ」
「お前らァ!タズナさんを連れて早く逃げるんだ!コイツとやっても勝ち目はない!オレをこの水牢に閉じ込めている限り、こいつはここから動けない!水分身も本体からある程度離れれば使えないハズだ!!とにかく今は逃げろ!」


確かに、今はタズナさんを連れて逃げるのが先決かもしれない。だが、そう簡単に再不斬が逃がしてくれるはずもない。再不斬を足止めし、時間を稼ぐ役目が必要だ。蹴り飛ばされ、今だ座り込んでいるナルトを守るように立ち、クナイを構え真っ直ぐに再不斬を見据える。


「!」
「シオン!?」
「シオン!そのままナルトを連れて逃げろ!」
「……ナルト、ここは私がやる」
「!」
「早くサスケ達と一緒に、タズナさんを連れて逃げて」
「…っ」
「ちょっと!シオン!?」
「あのウスラトンカチ…!」
「早く、ナルト、」

「うおおおお!!」

「え、ちょ、ナルト!?」


逃げろと言う言葉を聞かず、いきなり再不斬に向かい突っ込んで行くナルト。人の話を聞けと後でひっぱたいてやる。


「バ…バカよせ!」
「あいつ…」
「あ!ナルトォ!何考えてんのよ!」
「フン…バカが」


案の定またもや再不斬に蹴り飛ばされたナルト。そんなナルトに、サクラが叫ぶ。


「一人で突っ込んで何考えてんのよ!いくらいきがったって、下忍の私達に勝ち目なんてあるわけ…」
「!」


ゆっくりと起き上がったナルトの手には、先程蹴り飛ばされた時に外れた額当てが握られていた。ナルトの目的は再不斬ではなく、額当てを取り返すことだったらしい。きっとナルトにとって額当ては、それほどにまで価値のあるもので、ナルトの誇りなんだ。そんなナルトの情熱が垣間見えた気がして、気分が高揚するのを感じた。

取り戻した額当てを付け直したナルトが、再不斬に向かい何かを叫ぼうとしたのが分かり、咄嗟に両手で塞いで言葉を封じる。声にならない声を出しながら暴れるナルトに、ニッコリと笑って見せれば、ナルトはかちりと固まってしまった。どうしたのかとも思ったが、その内に再度促すことにする。


「額当ても取り戻したし、今度こそタズナさんを連れて逃げて。いいね?」

ナルトの返事を聞く前に、再不斬の水分身に向かって走り出す。そしてクナイを投げたと同時に印を結ぶ。


「土遁・土流槍!」
「!」


再不斬の左側の足元の地面から、無数の岩の槍が出現する。全て左側からの攻撃だったことにより、再不斬の水分身は右側に跳んで避ける。いきなり土遁を使ったこともあってか、狙い通りに避けてくれた再不斬に向かい脚を振り下ろすが、腕で防御されてしまった。再不斬の腕を蹴った反動でくるりと一回転し、距離を取れば、すぐさま距離を詰められ大刀で切りかかられる。それをクナイで受け止めれば、ガキンという独特の金属音が響き渡った。


「ほぉ…見込みのあるガキもいるじゃねェか」
「それは…どうも!」


再不斬本体ならば、力では勝てないだろう。しかし相手は分身だ。力で押し勝ち、鳩尾に蹴りを食らわせれば、再不斬の分身はぼんっと消えた。それにとりあえず息をつけば、飛び込んできた光景に目を見開く。まだいたらしい水分身がサクラとタズナさんへと襲い掛かろうとしていた。二人はこちらを見ていて、気づいていない。


「サクラ!タズナさん!伏せて!」
「!?」


咄嗟に放ったクナイは再不斬の水分身へと命中し、再不斬の分身が消えたことを確認し一先ず安堵したその時だった。


「!?」
「シオン!!」


すぐ後ろまで迫っていた更なる再不斬の水分身には、反応が遅れてしまった。どんだけ湧いて出て来るんだ、なんて悪態をつきながら防御しようと試みる。何とか腕でガードはしたものの、勢いは殺せず跳ばされた先も打ち所も悪かったらしい。激しい背中への痛みの後、意識はフェードアウトしてしまった。










ふわりと身体が浮いたような感覚に、目を明けようと試みるがどうにも重くて堪らない。身体もまるで、鉛でもつけているかのように重い。必死に目蓋を上げれば、微かに開いた視界に光が差し込む。しかし光は淡くぼやけていて、まどろみの中から抜け出せない。


「まだ、眠っていた方がいいですよ」


突如落ちてきた優しい声色に驚きつつも、声も出せなければ顔もぼやけてよく分からない。


「あれだけの勢いでぶつかったんですから、身体だって辛いはずです」


一体この声の主は誰だろう?とても優しくて、労わるような声色はひどく心地いい。その声に誘われるように、再び意識は落ちていった。


「―――こんなに傷ついてまで、貴方はどうして守ろうとするんですか? 」


声は誰にも届かず消えていく。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -