タズナさんを護衛という任務はすぐに帰って来れるような任務ではないので、一旦家に戻り荷造りをしてくることになった。家へと帰ると、最低限の物だけをリュックに詰め込む。あ、昨日買っておいた明太子味のポテチは持っていこう。仕上げにポテチを詰め込み、軽く最終チェックをした後、机の引き出しから小ぶりの黒い手帳を取り出す。これに、その時覚えていただけの未来のことが書いてある。いきなりのCランク任務だ。何かしらのアクションが起こるかもしれないと思ったが、手帳にはそれらしきことは書かれていなかった。すでに私が忘れていて、書かなかっただけかもしれないが。というか単語が書かれているだけで非常に分かりづらい。もう少し詳しく書いておくべきだろ、と自分に呆れるが今さらどうしようもない。パタリと閉じ、引き出しへと戻す。閉じる直前に何故か、『白い少年』という字が目に入った。

火影邸で別れて1時間後、タズナさんを含む全員が門の前に集合した所で、ナルトがそれはそれは大きな声で「出発ー!」なんて両腕を挙げながら叫ぶ。かくして出発した私達だが、少し前を歩くナルトはやはりやる気満々といった様子だ。相変わらずの元気の良さは流石ナルトと言ったところか。


「何はしゃいじゃってんのアンタ」
「ナルトはいつも元気だね」
「シオン、ナルトのこれは元気が良いって域を超えてもはや煩いよ」
「サ、サクラちゃぁん…」
「フン、ウスラトンカチ」
「ウスラトンカチって言うなァア!」
「はしゃいで足引っ張るなよ。ウスラトンカチ」
「はしゃいでなんかねェし!お前こそ、足引っ張るんじゃねえってばよっ!」
「ちょっとナルト!サスケ君が足引っ張るなんて有り得ないわよ!」
「こらそこー喧嘩なら任務が終わってからにしろー」


それもどうかと思う。ぐだぐだな私達のやり取りを不安に思ったのだろう。タズナさんは酒瓶片手に疑わしげだ。


「おい!…本当にこんなガキで大丈夫なのかよォ!」
「ハハ…上忍の私がついてます。そう心配いりませんよ」
「コラじじい!あんまり忍者をなめんじゃねェーぜ!オレってばスゲーんだからなぁ!」
「そうなんですよ!ナルトは朝昼晩、毎日毎日ラーメンで生き抜いているんです。ある意味すごい。一体何故いい加減に飽きないのか。私は尊敬してます」
「だろだろ!やっぱオレってばスゲーんだってばよ!」
「………褒めてねェだろウスラトンカチ」


どうやらサスケの言葉はナルトには聞こえなかったようで、また言い合いになるのは免れた。まあ確かにサスケが言うように褒めてはないけど本当にすごいとは思っている。ラーメンは大好きだけど、流石にナルト程の頻度では食べられない。


「いずれ火影の名を語る超エリート忍者!…名をうずまきナルトという。覚えとけ!」
「火影っていやー里1番の超忍者だろ。お前みたいのがなれるとは思えんが」
「だーうっさい!火影になるためにオレってばどんな努力もする覚悟だってーの!オレが火影になったらオッサンだってオレのこと認めざるをえねェーんだぞ!!」
「認めやしねーよ。ガキ…火影になれたとしてもな」
「!………ぶっ殺ーーす!!」
「だからやめろ、バカ、コイツ」



カカシ先生に押さえられながらも、しばらくナルトは暴れ続けたのだった。

数分後には、多少は落ち着いたが、なおもぷりぷりと怒っているナルトを先頭に順調に歩みを進めて行く。なんだかあれだ。意地を張ってるナルトが可愛い。一人で少し先を行くナルトに追いつき、隣に並べば、ナルトはいじけた様子でちらりとこちらを見た。やっぱり普通に可愛い。


「ナルトはさ、」
「………」
「キノコは好き?」
「…は?急になんだってばよ?」
「いや、よく見ると道端にキノコ生えてるからさ。ほら」
「あ、本当だ。しかも結構あるってばよ」
「食べれるのかな?食べたら笑いが止まらなくなったりして」
「いやいや、涙が止まんなくなるかもしれねーってばよ」
「もし笑いが止まらなくなるキノコだったら、是非ともサスケに食べさせたいね。サスケがげらげら笑ってるところ、見たくない?」
「いいなそれ!あいついっつもスカしてっからちょー見てェってばよ!」
「だよね!ぶぶぶ!」


ひとしきり笑ったところで、あまり離れてはまずいとカカシ先生達の所へ戻れば、何やらサクラが波の国に忍者はいるのかとか聞いてカカシ先生がうんたらかんたら。まあ結論を言うと、Cランクの任務で忍者対決なんてないので安心しろ、とのことだ。カカシ先生がそう言った時のタズナさんの様子がおかしかったような気もしたが、まああれだろ。トイレしたくて言い出せないとかいうやつでしょ。よしここはひとつ私が話を切り出しやすいように一肌脱いで…おとと、足を下ろそうとして水溜まりに気づき、濡れるのは当然嫌なので大股で越える。水溜まりがあるなんて全く予想していなかっただけに少しだけ驚いてしまったよ。だって最近は雨なんて……ん?明らかにおかしいなこれ。バリバリ怪しいなこれ。


「んんんん?」
「シオン、どうかした?」
「いや、…先生、最近雨って降りましたっけ?」
「!……降ってないね」
「ですよね…」
「………」


次の瞬間、感じた殺気にバッと後ろを振り向けば、鎖のような武器でカカシ先生を狙っている敵。しかし焦りはしない。大丈夫、カカシ先生ならば。だがカカシ先生は敵の武器によってばらばらにされてしまった。しかしやはりこれも、焦りはしない。


「キャーー!!」
「カ…カカシ先生ェ!」

「二匹目」

「!!」


次にナルトの背後に現れた敵は、カカシ先生をやった武器で次はナルトを狙う。対処できない程速くはないと思うが、恐怖からか全く動けないナルト。フォローする為向かおうとした矢先、ナルトを救ったのはサスケだ。クナイを使い、敵自身の鎖を利用して相手の動きを止める。しかし敵の鎖は取り外し可能だったらしく、鎖を外し自由になった敵は、一人は再度ナルトを、もう一人はタズナさんを狙う。護衛対象であるタズナさんを守る為、恐怖に駆られながもタズナさんを背にクナイを構えるサクラの元にはサスケが向かった。だったら私はナルトを。ナルトとナルトに迫る敵の間に入り、振りかざされた敵の爪をクナイで受け止め、蹴りをお見舞いしてやろうとしたのに、敵は一瞬にしてカカシ先生に捕らえられていた。変わり身を使ったのは知っていたけれど、出て来るところを狙っている気がするのは私だけだろうか。


「ナルト、すぐに助けてやらなくて悪かったな。ケガさしちまった…お前がここまで動けないとは思ってなかったからな。とりあえず、サスケ、シオン、よくやった。サクラもな」
「ナルト、大丈夫?」
「……あ、ああ…」


ナルトは手の甲に怪我を負っていた。じんわりと血が滲んできたその手を取って見てみれば、傷自体は深くはないようで安心する。手を取ったままナルトを見れば、傷には目もくれぬ様子で、唇を噛み何かに耐えているように見える。しかしそんなナルトに掛けられたサスケの言葉には激しく反応を見せた。


「ケガはねーかよ。ビビリ君」
「!!」
「ナルト!ケンカはあとだ。こいつらの爪には毒が塗ってある。お前は早く毒抜きする必要がある。傷口を開いて毒血を抜かなくちゃならない」
「、……」
「あまり動くな。毒がまわる……タズナさん」
「な…何じゃ…!」
「ちょっとお話があります」


カカシ先生が真面目な表情でタズナさんへと言葉を掛ける。それを聞いたタズナさんの表情はどこか硬かった。

改めて、先程襲ってきた忍の額当てを見る。そこに刻まれているのは、見慣れた葉っぱのマークではなく、少し緩やかに曲がった四つの棒線。


「……この額当て、霧隠れの忍ですね」
「ああ、中忍ってとこか…こいつらはいかなる犠牲を払っても戦い続けることで知られる忍だ」
「……なぜ、我々の動きを見きれた」
「数日間雨も降っていない今日みたいな晴れの日に、水溜まりなんてないでしょ。この子だって気付いてたよ。ね、シオン?」
「まあ、おかしいなとは」
「………」


なな、何なんだ一体。サスケからの視線が痛い。痛過ぎるんだが。


「あんたそれ知ってて何でガキにやらせた?」
「私がその気になればこいつらくらい瞬殺できます…が、私には知る必要があったのですよ。この敵のターゲットが誰であるのかを…」
「どういうことだ?」
「つまり狙われているのはあなたなのか、それとも我々、忍のうちの誰かなのか…ということです」


狙われていたのはタズナさんに間違いない。だが、だからこそこれまで以上に警戒しながら、タズナさんの護衛を続行しようというわけにはいかない。私達が受けたのはあくまでCランク任務だ。その内容は、ギャングや盗賊などのただの武装集団からの護衛であって、忍からなどでは勿論ない。依頼情報に偽りがあれば任務外となるのだ。


「これだとBランク以上の任務だ…依頼は橋を作るまでの支援護衛という名目だったはずです」
「………」
「敵が忍者であるならば…迷わず高額なBランク任務に設定されていたはず…何か訳ありみたいですが、依頼でウソをつかれると困ります。これだと我々の任務外ってことになりますね」
「この任務、まだ私達には早いわ…やめましょ!ナルトの傷口を開いて毒血を抜くにも麻酔が要るし…里に帰って医者に見せないと……」
「ん――」
「………」
「……こりゃ荷が重いな!ナルトの治療ついでに里に戻るか」
「!」


ナルトが悔しげにギリ、と歯を食いしばる。ナルトの為に任務を中断し里に帰る、と言っているようなものなのだ。敵に襲われた時、ナルトが最も負けたくないと思っているサスケは動けたのに、自分は恐怖から動くことができなかった。その事実も今、ナルトを責め立てているに違いない。このまま、今回はおとなしく引くこともひとつの選択、だと思う。しかし人一倍負けん気の強いナルトだ。おそらくはきっと。


「!」


次の瞬間、ナルトは自分の傷口にクナイを突き刺したのだ。当然そこからは血が流れ、ナルトの腕を伝う。


「オレがこのクナイで…オッサンは守る。任務続行だ!」


やっぱりナルトがこのまま引き下がるわけがなかった。そんなナルトに対し、マゾじゃないかというサクラに本当にそっちの気があったりして、なんて考えてちょっぴり笑ってしまった。






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