演習の次の日から、早速下忍として任務を任されるようになった私達。毎日毎日てんてこまいである。敵の忍と戦ったり、重要機密の書かれた巻物を届けたり、大名様を護衛したり…なんてことは勿論無い。迷子ペットの捜索に子守り、川のゴミ掃除に芋掘りをして草抜き、そしてエトセトラ、なんて任務を日々こなしている。全然忍っぽくないと(もはや万屋じゃないか?)少々つまらない気はするが、誰もが通った道なのだからやらなければ仕方ない。しかしナルトは不満が溜まりに溜まっていたらしく、次の任務こそはと火影邸に赴いたものの、三代目が告げたこれまでの任務内容と変わらない次の任務に、遂に不満が爆発したのだった。 「ダメー!そんなのノーセンキュー!オレってばもっとこう、スゲェー任務がやりてーの!他のにしてェ!!」 それからナルトは本当によく頑張ったと思う。ダダをこねて、イルカ先生に怒鳴られようとも耐え、カカシ先生に殴られようとも耐え、三代目に任務についてのお堅い話をされれば全く聞く耳持たずで。 「きのうの昼はとんこつだったから今日はミソだな」 「あ、ナルト一楽行くの?だったら私も行こうかな。気分は塩ラーメン!」 「塩も旨いよな!」 「きけェエエイ!」 「ど…どーもすみません」 「あーあ!そうやってじいちゃんはいつも説教ばっかりだ。けどオレってばもう…!いつまでもじいちゃんが思ってるようなイタズラこぞうじゃねェんだぞ!」 「えええー」 「んな!シオンちゃんってばなんだよその顔!?」 「だってナルト十分イタズラこぞ、」 「ナルト静かにして!あんた、少しはサスケ君のクールさを見習いなさいよ。やっぱり男はサスケ君みたいにクールでカッコ良くないと。あ、でもサスケ君なら〜、クールじゃなくても全然OK!なんて!きゃっ、言っちゃった!」 「サ、サクラちゃん…」 「……」 サクラにはサスケがどんな風に見えているのだろうか。王子様?王子様か?絶対背景キラキラしてるだろ。まあ確かにサスケの顔はかなり整っているとは思うが…改めてちらりとサスケの顔を盗み見る。 「……」 「……」 「……うーん…」 「………おい、」 整っているけれど、サスケは感情をあまり表情に出さないから勿体無い気がする。笑えばもっと素敵に違いない。願いがひとつ叶うなら、サスケが爆笑しているところが見たい、なんて願いもありだな。しかしサスケは、あまり表情が豊かでない故、余計にその顔立ちの端整さが際立っているとも思う。結局はあれだ。サスケはカッコイイで始まりカッコイイで終わるんだ。来世こそはサスケみたいにイケメンに生まれたいものだ。 「シオン、」 「あ、何?」 「いや…どうかしたのか?」 どうやら盗み見しているつもりが、かなりばっちり見てしまっていたらしい。怪訝そうな表情を浮かべるサスケに、やっぱりイケメンだこいつ、なんて思った。あれ?私サスケ褒めすぎじゃないか。 「いやね、サスケはやっぱりイケメンだなと」 「は、」 「ってうわ!」 パッと口を塞ぎ、サクラの方を向く。しかし何やら呆れながらナルトと話しているようで聞こえなかったらしい。良かったと胸を撫で下ろす。今のを聞かれて変な誤解をされては困る。ライバルなんて認識されたらもう泣きたくなってしまう。女同士サクラとは仲良くしたいし、サスケを好きなんて事実はないし。良かった良かったとサスケへと視線を戻せば、何やら難しい顔をしていた。この数秒で何があった。 「サスケ?」 「お前、さっきの…」 「?」 「そっちの二人、話聞いてた?」 「!?」 「、…」 ヌッと話に入ってきたカカシ先生に少しだけびっくりしつつ、聞き逃したことを白状すれば、軽くチョップを噛まされた。 話によれば、どうやら三代目が折れてくれたらしく、Cランクの任務が出来るらしい。ナルトのテンションがやたらアップしているわけだ。そしてその内容というのが、ある人物の護衛らしく、内心私もガッツポーズだ。やっとなんだか忍者っぽいしね。 「だれ?だれ?大名様!?それともお姫様!?」 「そう慌てるな。今から紹介する!入って来てもらえますかな…」 ガラリとドアが開かれ入って来たのは、酒瓶片手にすでに酔っ払ってるんじゃないのかって感じのおじいさんだった。べべ別にお姫様だとか王子様だとかが出て来るなんて期待してたわけじゃないし!それにしても、酒の匂いが強い。独特の匂いが漂う。 「なんだァ?」 「超ガキばっかじゃねーかよ!……とくにそこの一番ちっこい超アホ面。お前それ本当に忍者かぁ!?おめェ!」 「アハハ。誰だ一番ちっこいアホ面って」 どう考えたってナルトだが、気づいていないらしい。そんなナルトに、お前だと言う視線をサスケ、サクラと共に送る。視線に気づいたのか、ナルトはきょろきょろと自分と私達を見比べた後ハッとした。 「…!ぶっ殺す!!」 「これから護衛するじいさん殺してどーするアホ」 どんまいナルト。君に食生活の改善をオススメするよ☆なんて。いや本気だけれども。 「わしは橋作りの超名人タズナというもんじゃわい。わしが国に帰って橋を完成させるまでの間命をかけて超護衛してもらう!」 というわけで、タズナさんを守るという初のCランク任務を与えられたのだった。 |